米地質調査所(USGS)が、米中部から東部にかけての地震発生の危険性を示す最新の地図を公開しました。これまでにもこのような地図は発表されてきましたが、今回の地図には初めて人為的な要因によって誘発される地震も加えられました。
2016年に自然由来もしくは人為的な要因による地震が起こる可能性
上の地図は、2016年に米本土の各地域で地震が起こる可能性を表しています。従来USGSが発表していた地図では、自然由来の地震だけが表示されていましたが、今年の地図には、シェールオイル/ガス採掘が原因で起こると考えられる人為的な地震も加えられました。これは、USGSが無視できないくらい人為的地震が増加したためと考えられます。
人為的な地震の起こるリスクが高いのは、オクラホマ、カンザス、テキサス、コロラド、ニューメキシコ、アーカンソーの6州で、上の地図を見れば一目瞭然ですが、オクラホマ州のリスクが最も高くなっています。米中部から東部にかけて地震発生の危険がある地域では、約700万人が生活しているとUSGSの研究者は指摘しています。
1980年以降の自然由来と人為的な地震。黒で囲まれているのはフラッキングが原因と考えられる地震が急増した地域。
これは、1980年以降に起こった自然由来と人為的な地震の両方を表した地図です。フラッキングが原因と考えられる地震が急増した地域は黒で囲まれています。オクラホマ州で発生した地震の数が尋常ではありません。以前にも記事にしましたが、オクラホマ州では近年フラッキング由来と考えられる地震が急増しています。1991年から2008年までには年に3回以下しか起こらなかったマグニチュード3以上の地震が2009年以降に急増し、2014年には米本土で最多となる585回、2015年はそれをさらに大きく上回る857回の地震を記録しています。
地震の原因については、シェールオイル/ガスを採掘する際に水や砂、化学薬品を高圧力で注入するフラッキングそのものにあると考える研究者もいますが、多くの研究者は、オイル/ガスを採掘した後に残った廃液を油井/ガス井に戻すことで地盤が滑りやすくなり、地震を引き起こしていると考えています。
また、これらの人為的な地震を巡っては、オクラホマ州でエネルギー会社を相手取った訴訟が相次いでいます。14人の住宅所有者が、シェールオイル/ガスの採掘が危険な地震を引き起こしているとして12のエネルギー会社を訴え、また、持ち家が地震によって損傷した9つの郡の住宅所有者が集団でエネルギー会社を訴えています。
倫理的に考えれば、住宅所有者が修理費や地震保険の保険料を支払わなければならない現状はおかしいはずなのですが、エネルギー産業は利益を追求するだけで、そのために起こった地震の被害に対する法的責任を認めようとはしていません。
今回のUSGSによる発表がフラッキングによるシェールオイル/ガスの採掘の規制に繋がるとは考えられていませんが、米民主党の大統領指名候補であるバーニー・サンダース氏もヒラリー・クリントン氏もフラッキングに反対の意思を表明しており、これまでブームに乗って急成長を遂げ、石炭火力を発電量で超えた天然ガスに対する逆風が強くなりそうです。
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【参照】
Millions Of Americans Are Living In Areas That Are At Risk From Human-Caused Earthquakes|ClimateProgress
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