地球は自転軸を中心に24時間に1回の自転を行っていますが、極点は必ずしも同じ位置にあるわけではありません。地球の質量の変化によって極運動は変化し、極点も移動を繰り返しています。科学者は1899年以降、この極点と極運動の変化を観測してきました。
そして、今回、米ジェット推進研究所とカリフォルニア工科大学の研究チームが、グリーンランドと南極大陸の氷の融解による地球の質量の変化に伴って極運動も変化し、これまではカナダの方へ移動していた北極点が、グリニッジ標準時ラインに沿うように東へ移動しているという研究結果が、科学誌「サイエンス・アドバンス」に掲載されました。
上の図は、2000年以前の極点/回転軸の移動(左側の地球)と、2003年から2015年までの極点/回転軸の移動(右側の地球)を表しています。真ん中の地球は、地域による質量の増減(赤が増加、青が減少)を表しています。
研究によると、2000年以降、グリーンランドでは1年あたり278ギガトンの氷床が、南極大陸では92ギガトンの氷床が融解しており、それ以外にもアラスカからパタゴニアにかけてもとけた氷が海へ流れ込み、質量に大きな変化が起こっています。
この質量の変化によって極運動も変化し、極点が移動する大きな要因となっていると研究は指摘しています。特に、グリーンランドの氷床の融解の影響が大きいそうです。しかし、両極地の氷の融解だけでなく、その他の地域で起こった干ばつや局地的な豪雨などによる水循環の変化も原因になっていると研究者は述べています。
今後、極点がどの方向へ移動するかは、グリーンランドと南極大陸の氷床の融解速度や、それに伴い海へ流れ込んだ水によって海面上昇が起こる地域、大陸の水の質量バランスの変化などの影響を受けるようですが、現在と同じ状況が続く限り、以前のようにカナダの方へ移動することはなさそうです。
極点の移動によって人間活動に弊害が出ることはありませんが、今回の研究は人間活動が地球に与える影響の大きさをよく物語っていると言えるのではないでしょうか。
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【参照】
Adhikari, S. & Ivins, E. Climate-driven polar motion: 2003-2015. Sci Adv 2, e1501693–e1501693 (2016).
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