島しょ国は海面上昇だけではなく水不足の被害も受けることになるという研究結果

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               Credit: FreeImages.com/Pere Rosales

  インド洋のモルディブ、南太平洋のツバルやマーシャル諸島、フィジーなどの小さな島しょ国は、すでに気候変動による海面上昇の影響を受けており、その深刻さは今後悪化の一途を辿ると言われています。

  しかし、気候変動による負の影響は海面上昇だけにとどまらず、今世紀半ばから今世紀末にかけて、島しょ国の70%以上、約1600万人が深刻な水不足の影響を受けるという研究結果が、科学誌「ネイチャー・クライメートチェンジ」に掲載されました。

  従来の気候モデルでは、今世紀半ばまでに50%の島しょ国では乾燥が進み、50%は湿潤になると予想していました。しかし、従来の気候モデルは気候を予測する際に用いられるグリッドのサイズが東西240 km×南北210 kmと大きすぎて、小さな島しょ国は事実上周辺の「海」と同じ気候になり、陸地から蒸発する水分の正確な予測が困難でした。

  今回の研究では、従来の気候モデルでは小さすぎて島としてカウントされていなかった、2090年までに1.8℃から3.7℃の気温上昇が予想され、約1800万人が暮らす小さな島しょ国を80のグループに分類し、新たな方法によって水分の蒸発量を分析した結果、2050年までに73%のグループとそこに暮らす約1600万人(91%)が水不足に陥ることがわかりました。また、2090年までには1520万人(86%)が水不足の影響を受けると指摘しています。

  2090年までに水不足の深刻な影響を最も受ける島々として、ロビンソン・クルーソーの舞台として有名なファン・フェルナンデス諸島やイースター島、小アンティル諸島、フランス領ポリネシアが挙げられています。

  従来の気候モデルでは小さすぎた島しょ国は今回の研究の対象に含まれていますが、逆に今回の研究に含むには大きすぎた島しょ国の中にも、将来的に水不足が懸念される島々が存在します。大アンティル諸島の気候は、先ほど挙げた小アンティル諸島とほぼ同じなのですが、今回の研究には含まれていません。小アンティル諸島の人口は約370万人ですが、大アンティル諸島では4000万人近くが暮らしており、これらの人々は小アンティル諸島とほぼ同じ規模の水不足の影響を受けることになります。

  農業や飲料用など、生活用水を雨水に依存している多くの島しょ国では、今後は正確な降水量と蒸発量の把握がより重要になります。死活問題と言ってよいでしょう。人口の増加が予想される国々では、水不足がさらに深刻な問題になっていくのは疑う余地がありません。

  今回の研究をきっかけに、島しょ国を含め気候変動に対して脆弱な小さいローカル地域の気候の分析ができるようになれば、より細かな適応策の実行が可能になるため、この分野の研究の進歩が期待されます。

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【参照】
Karnauskas, K., Donnelly, J. & Anchukaitis, K. Future freshwater stress for island populations. Nat Clim Change (2016). doi:10.1038/nclimate2987

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