【独り言】 175ヶ国が「パリ協定」に署名  希望で気候変動は止められない

  アースデイの4月22日に、ニューヨークの国連本部において、昨年12月にパリで開催された国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で合意を果たした「パリ協定」の署名式が行われ、米中や日本を含む175か国の代表が署名しました。1日で署名した数では、175ヶ国は最多だったそうです。

  「歴史的」という言葉が目立つこの「パリ協定」への署名式ですが、個人的にはとても冷めた目で見ています。

  これがスタート地点なのに、まるでゴールに辿り着いたような雰囲気や、解決の糸口すら見つからない様々な問題を抱えているのに漂う楽観的なムードに違和感を覚えずにはいられないんですよね。

  署名を終えた国の代表たちがそれぞれの国に帰って、国連に提出している各国の目標(「Intended Nationally Determined Contributions (INDCs)/各国が自主的に決定する約束草案」)を達成するために努力をするとか、何か悪い冗談を言ってるのかと感じるほどです。

  なぜか?各国がその目標を果たしたところで、気温上昇を「2℃を大きく下回り1.5℃に近い数字に抑える」というパリ協定の目標には遙かに届かないのが理由のひとつめです。

INDCs Estimate by Climate Scoreboard.png

INDCs Estimate by WRI.png

  上の2つのグラフは、INDCsを提出した各国がその目標を達成した場合に、何度気温が上昇するかを表したものです。

  Climate Interactiveは、各国が目標を達成しても気温は3.5℃上昇すると推定しています。世界資源研究所(World Resources Institute)が様々な機関を対象に行った調査では、気温上昇幅は2.7℃から5.2℃でした。

  野心的でもなんでもない、保守的な低い目標であることに加え、その目標を達成できなかった場合のペナルティは何もありません。これが冷めた目で見てしまう理由のふたつめです。

  こんな「みなさん、がんばりましょうね」程度の目標を持ち帰っても、企業の利益追求を中心に社会を回している日米をはじめとする先進諸国に何ができるというのでしょうか。

  現段階では、文書と言葉だけで、行動が伴っていません。

  日本は、目標を「温室効果ガス排出量を2030年度に2013年度比-26.0%」としながら、47基の石炭火力発電所の新規建設を計画しています。

  気候変動による影響は深刻度を増すばかりで、いつか起こることではなく、先進諸国内を含め世界中にすでに被害に遭っている人がいるというのに、「(何十年か先には)化石燃料から脱却する」という曖昧で無責任な「政治的意思」に欠ける姿勢からは、署名式で各国代表が漂わせた安堵や希望からは程遠いものしか感じられません。

  現段階では何の意味も持たないこの「歴史的」な「パリ協定」への署名を、茶番ではなく意味あるものに変えるために必要なのは、言葉ではなく強い政治的意思に基づいた行動です。「やるやる詐欺」はもう十分です。

  国連平和大使である俳優のレオナルド・ディカプリオが署名式で行った演説の中に、共感できる言葉がいくつかありました(英文による演説の文字起こしはこちら)。


  「今日、私たちはお互いに祝い合うことができますが、国に帰ってこの歴史的合意の目標を超えることに失敗すれば、何の意味もありません。今こそ、かつてない思い切った行動を起こす時なのです。」

  「…21年に及ぶ議論と会議を経た今、もうこれ以上の議論も、言い訳も、10年単位の研究も必要ないと宣言する時です。もうこれ以上化石燃料産業が科学と政治を操作・決定し、私たちの未来に影響を与えることを許してはいけません。この機関だけが、この場所に座っているあなたたちだけが、必要なことを成し遂げられるのです。世界は今、あなたたちを見ています。あなたたちは、未来の世代に褒め称えられるか、それとも非難されるか、どちらかなのです。」

  文書や言葉、希望で気候変動を止めることはできません。

  今こそ、行動する時です。

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