気候変動によってもたらされる影響の深刻さを知りながら、長年にわたって嘘の情報を流し、世論や政治を操作して気候変動対策を妨害したことなどがポリシーに反するとして、今年(2016年)2月にジェイムズ・ハンセン氏やマイケル・マン氏などの会員を含む100人以上が連名で米国地球物理学連合(AGU: American Geophysical Union)の会長宛にエクソンモービル社とのスポンサー契約を解除するよう要求していた問題で、AGUの会長は、理事会に諮った結果、エクソンモービル社が現在も直接的もしくは間接的に気候変動対策の妨害を行っている証拠は見つからなかったとして、今後も同社からの3万5千ドル(約390万円)のスポンサー料を受け取ると発表しました。
この理事会の判断に対し、スポンサー契約の解除を求めていた科学者らは、エクソンモービル社が現在も気候変動の科学に対する誤情報を流しているシンクタンクや権利擁護団体、事業者団体などのスポンサーを務め、気候変動を否定する100人以上の連邦議員に献金を行っているうえに、同社の役員などによって気候変動に関する誤情報の発信が続いていることを無視しているとして、批判的な声明を発表しています。
AGUがエクソンモービル社とのスポンサー契約を解除しないのならば会員登録の取り消しを検討するとコメントする科学者も出てくるなど、理事会の判断に対する批判的な声があがっており、今後この問題の行方に注目が集まっていますが、米司法省、連邦捜査局(FBI)や、ニューヨークなどをはじめとする米20州によるエクソンモービル社の気候変動に関する情報隠蔽問題の捜査の進行状況によっては、AGUが方針を変更して同社とのスポンサー契約を解除する可能性はあると考えられます。
AGU会長による声明の発表で一段落した印象はありますが、米司法省や20州による同社に対する捜査は「21世紀のたばこ訴訟」とも言われており、今後この問題はさらに大きくなるかもしれません。
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