【世論調査】アメリカ人の73%が地球温暖化は起こっていると回答  温暖化を信じる「共和党保守派」が急増

  近年の極端な気象現象の多さや、米本土が観測史上最も暖かい冬を経験したことなどから、気候変動を現実的で深刻な問題として心配するアメリカ人が増加傾向にあるのは過去の世論調査でも明らかですが、エール大学とジョージメイソン大学が共同で2016年3月にアメリカの有権者1004人を対象に行った世論調査で、アメリカ人の73%が地球温暖化が実際に起こっていると認識していることがわかりました。また、温暖化を現実に起こっていると考える共和党保守層が直近2年で19%増加するなど、共和党支持者の温暖化に対する認識の急激な変化が顕著になっています。

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  上のグラフは、直近3年間において「地球温暖化は起こっている」と回答した人の割合の変遷です。左端はすべての人の中で温暖化が起こっていると回答した人の割合で、真ん中は支持政党ごと、そして右端は民主党と共和党支持者をリベラルと保守的な層に分けた場合の割合です。
  温暖化が起こっていると考える人は過去3年間で増加傾向にあり、今回もこれまで同様民主党支持者が高い割合で温暖化を現実問題と捉えていますが、無党派層と共和党支持者は温暖化が起こっていると認識している割合が3年間でそれぞれ15%と16%増加しています。特に「共和党支持者の保守派(グラフ右端の「Con. Rs」)が28%から47%と3年間で19%も増えており、これまで温暖化に否定的だった共和党支持者の中でも極右の人たちですら温暖化を実際に起きている問題と捉え始めたことがわかります。

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  これは温暖化の原因についての設問への回答で、黒いバーは「人間活動」、赤いバーは「自然変動」、グレーのバーは「人間活動と自然変動の両方」と表しています。リベラルであるほど人間活動が温暖化の原因であると考え、保守的であるほど人為的気候変動には否定的であることがわかります。

Politics-and-Global-Warming-Spring-2016-03 - Awareness of Scientific Consensus over climate scientists.jpg
  「90%以上の気候科学者が、地球温暖化の原因が人間活動にあることについて合意している」ことを知っているかどうかを尋ねた設問では、民主党のリベラル層ですら38%しかそのことを知りませんでした。共和党支持者に至っては4%とほぼ誰も知らないと言ってもいい状況で、全体でも約6人に1人しか気候科学者間のコンセンサスに関する情報は行き渡っていませんでした。

Politics-and-Global-Warming-Spring-2016-11 - GW is important voting issue for 2016 Presidential election.jpg

  この設問では、「2016年の大統領選挙で投票する候補を決める際に重要だと思う問題」について尋ねたところ、地球温暖化を重要と答えた人は全体の33%で、23項目中19番目と関心の低さが目立ちました。リベラル層の民主党支持者は62%が重要(23項目中6番目の重要度)と回答しましたが、共和党保守派はわずか9%しか重要と回答せず、23項目中最も関心が低く、支持政党による溝の大きさを反映しています。

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  ここまでの設問に対する回答を見ると、70%以上のアメリカ人が温暖化は起こっていると考えているのに、大統領選における重要項目と考える人は少なく、リベラルと保守間の認識の差も大きいため、気候変動対策に対しても消極的な姿勢が見られそうな印象を受けますが、実際にエネルギー政策について尋ねたこの設問では、逆に積極的な気候変動対策を支持する人が多く、保守的な共和党支持者との溝も小さくなっています。

  例えば、「太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーのリサーチへの投資」という項目に75%の共和党支持者が賛成し、特に共和党支持者の保守派の72%が賛意を示すなど、支持政党間のギャップが小さくなっています。また、「温室効果ガスである二酸化炭素を環境汚染物質として規制」という項目に対しても、本来ならば反対しそうな共和党保守派の53%が賛成、「化石燃料企業への炭素税課税と収入税減税」にも半数近い共和党支持者が賛成するなど、社会全体の利益になると考えられる項目に賛成する保守層が多くなってきています。

Politics-and-Global-Warming-Spring-2016-19 - reducing co2 emission.jpg

  「他国がどうであれアメリカは二酸化炭素排出量を削減するべき」と回答した人は全体の65%(約3人に2人)にのぼり、共和党支持者の半数近く(47%)が賛成、60%の共和党リベラル/中道派が賛意を示すなど、過去に見られた「中国が削減するまでアメリカが削減する必要はない」という強行的な考え方はなくなってきたようです。

  今回の世論調査の結果を見て、「地球温暖化は現実に起こっている問題だ」と認識する人が着実に増えてきたのはいいことだと感じました。まず、問題があることを認めないと、そこから先に進むことはできません。やっと世論が政治と行政を動かす下地が整ってきたという印象を受けます。


  今後、再生可能エネルギーの普及や温室効果ガス排出量の規制、炭素税の導入を世論に訴え、さらに支持政党によるギャップを埋めていく必要があるでしょう。

  民主・共和両党の支持者間にある気候変動に関する溝よりも、共和党支持者と共和党議員の間の溝の大きさの方が、気候変動対策を進めるうえで深刻な問題だと思います。米議会の上下院両院で過半数を占め、化石燃料産業と関係が深い共和党議員が気候変動対策関連法案に賛成する可能性は低いため、この流れを変えるためには共和党支持者間でより強い世論を形成し、気候変動を否定する大統領候補や連邦議員への投票を行わないなどの強い姿勢を見せなければいけません。

  気候変動と気候変動対策を否定する保守層の減少傾向は今後も続くと思いますが、この流れを止める最も大きな要因になる可能性が高いのは、化石燃料産業によるロビー活動の強化や、Foxニュースやウォールストリート・ジャーナル紙をはじめとする保守系報道機関による誤情報の発信ではなく、冷夏や寒波などの「温暖化してないかも」と感じさせる短期的な気候の変化ではないかと思っています。気候に関する人の記憶はとても曖昧なものなので、エルニーニョ現象が終息してラニーニャ現象に移行したときに世界平均気温が極端に下がるようなことがあれば、また「温暖化していない」という意見を持つ人が増える可能性はあると思います。

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