エルニーニョ現象の影響を受けて、暖かく乾燥した冬を過ごしたカナダ西部のアルバータ州フォート・マクマレーで大規模な山火事が発生し、8万8千人の住民が避難を強いられています。これを受けて、アルバータ州は非常事態宣言を発令し、消火作業を急いでいます。
Wildfire Spreads in Fort McMurray https://t.co/WP4HnKjL7T #NASA pic.twitter.com/7dUTDAmqRd
— NASA Earth (@NASAEarth) May 5, 2016
日曜日(2016年5月1日)に発生した山火事の延焼面積は5月5日現在で約8万5千ヘクタール(850平方キロメートル/長野市よりも大きい)に達し、1100人以上の消防士が145機のヘリコプターなどを用いて消火活動に当たっていますが、49ヶ所で山火事が発生しているうえ、熱波により空気が極度に乾燥しているため火の勢いが強く、思うように消火活動は進んでいません。
2016年5月3日の北アメリカにおける平均気温との偏差
Credit: Mashable
アルバータ州フォート・マクマレーの気温は、平年を23℃上回る32.6℃を記録し、1944年の記録を5℃近く上回る熱波に見舞われ、平年よりも積雪量が少なかったために雪解け水も少なく、山火事が起こりやすく、起これば拡大しやすい状態になっていました。上の図は5月3日の平均気温との偏差を表していますが、フォート・マクマレーを含むカナダ西部は最大で平年よりも気温が20.5℃高い地域があるなど、依然として山火事が発生しやすい状態は続いています。
エルニーニョ現象が発生すると、米西部やアラスカ、カナダ西部の冬が高温・乾燥した状態になるのは予想されていたとおりなのですが、この時期にここまで気温が上がりと乾燥した状態になるとは思われていませんでした。
Credit: Climate Central
しかし、上のグラフを見ればわかるように、気候変動が進むと熱波が起こりやすく、その強さや規模も大きくなるのは以前から予測されていました。極端な気象現象の中でも、熱波と気候変動の関連性が高いことは科学的に明らかになってきており、今回の大規模な山火事も気候変動によって発生しやすい状態になっていたと言えます。
アメリカ国内に目を向けると、今年に入ってから4月29日までの間に1万5千件以上の山火事・野火が発生し、延焼面積の合計は約6千平方キロメートル(ほぼ茨城県丸ごと)に達しており、山火事・野火による被害が過去最も大きかった2015年の同時期を上回っています。
ひとたび山火事が発生すると延焼を防ぐのがとても困難なことは、近年アメリカで発生している山火事の記録を見れば明らかです。山火事・野火の発生件数と延焼面積を見ると、件数はそれほど上昇していないのに、延焼面積の合計が大きくなっています。
気候変動が進めば、今後もどこかで大規模な山火事が頻繁に発生することになります。山火事が発生しやすい状態になるのを防ぐためには、迅速な気候変動対策の実行するしかありません。
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