WHOレポート: 世界の大気汚染が悪化し貧困国に最も深刻な打撃  日本の15都市中14都市もWHOの基準値を超える汚染

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Credit: FreeImages.com/Rybson

  世界保健機関(WHO)は、大気汚染に関する最新のレポートを発表し、PM2.5やPM10がWHOの定める基準値を上回る都市に住む人が全体の80%を超えており、特に収入の低い都市に住む人々が最も影響を受けていると指摘しています。

  103ヶ国の3000都市における2008年から2013年までの大気汚染データによると、中低所得国の人口10万人以上の都市の98%が、WHOが定める大気汚染のガイドラインの基準を満たしていない一方で、基準を満たしていない所得の高い国は56%と42%も低く、国家間における所得格差が環境汚染の格差に繋がっていることがわかります。

  また、大気汚染がひどい都市ほど、脳卒中や心疾患、肺がん、そしてぜんそくなどの慢性及び急性呼吸器疾患にかかる人が多くなり、最悪のケースでは死に至ります。

 WHOがデータベースから67ヶ国の795都市における2008年から2013年までのPM10とPM2.5による大気汚染を比較したところ、世界的に以下のような傾向があったそうです。

・都市圏の大気汚染は8%悪化した一方で、改善されている都市もある。
・基本的に、地中海東岸と東南アジアの低所得国と中間所得国における大気汚染がひどく、WHOの基準値の5倍から10倍の汚染物質が検出。これらの地域に次いで、西太平洋地域の低所得国の大気が汚染されている。
・地中海東岸と東南アジアの低所得国の3分の2以上の都市で大気汚染物質が5%以上増加している。
・アフリカについてはまだデータが不足しているが、現存するデータによると大気中の粒子状物質は基準の中間値よりも高い。

  PM10やPM2.5と呼ばれる大気中の粒子状物質は健康被害の大きな要因となっており、WHOは世界で毎年300万人以上が早死にしていると指摘しています。

  また、大気汚染は個人の努力で改善できるレベルではなく、国際社会や国、都市などあらゆる行政レベルで汚染物質の排出量が少ない交通手段やエネルギー効率の高い電化製品、廃棄物管理などが必要とWHOは提言しています。

  今年初めには、米科学振興協会(AAAS)が2013年の大気汚染による早死には世界で550万人以上にのぼったと発表するなど、大気汚染は世界的に深刻な問題であり、低中所得国の産業化が大気を汚染することなく進められるような技術が先進諸国から提供されるようなシステムを国際社会が協力して作らなければいけません。国や都市の貧富の差によって、そこに暮らす人たちや屋外労働者の健康への影響に差があるのは、早急に解決するべき深刻な環境正義問題です。

  WHOが定めるガイドラインによると、大気中のPM2.5の上限は年平均で1立方メートルあたり10マイクログラム、24時間平均で25マイクログラム、PM10は年平均で1立方メートルあたり20マイクログラム、24時間平均で50マイクログラムとなっていますが、WHOのデータベースで確認すると、大気汚染は発展途上国で起こっていることとは言えず、日本にとっても他人事ではないようです。

  WHOのデータベースには、日本の沖縄、鹿児島、福岡、岡山、大阪、京都、岐阜、名古屋、静岡、新潟、横浜、八王子、東京、仙台、札幌の15都市が登録されています。以下の表で各年における2012年の大気中の粒子状物質を確認すると、日本の大気が汚染されていないとは決して言えません。

WHO Air Pollution Report 2008-2013 - Japan Cities.jpg
2012年の各都市における大気中の年平均PM10とPM2.5。単位はマイクログラム/立方メートル(μg/m3)
上限値は、PM10が年平均20 μg/m3、PM2.5が10 μg/m3

  上の表を見ると、PM10もPM2.5も上限値を超えていないのは札幌だけで、福岡や鹿児島、岡山、大阪など西日本の大気が汚染されていることがわかります。

  日本は対岸の火事ですませるのではなく、国民を汚染され健康への影響が懸念される空気の中で生活させているという自覚を持って、大気汚染対策に取り組む必要があります。

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