現在、大気中の二酸化炭素濃度がかつてない速さで上昇しているという記事をこれまでにいくつか書いてきました。今年に入ってから2月、4月、5月の二酸化炭素濃度、昨年(2015年)の同月と比較して記録的な上昇幅になっていることや、二酸化炭素濃度と気温が急激に上昇した暁新世(ぎょうしんせい)・始新世(ししんせい)境界温暖化極大期(PETMと呼ばれています)よりも現在の二酸化炭素排出ペースが遥かに速いことに触れてきました。
ニュースメディア等で最も取り上げられるのは、グラフの呼称である「キーリング曲線」の名称の元になったチャールズ・デービッド・キーリング氏が二酸化炭素濃度の観測を始めた米ハワイ州マウナロアのデータと、その他の観測所のデータも合わせた地球全体の平均二酸化炭素濃度です。
マウナロア観測所の最新データでは、2015年5月の平均二酸化炭素濃度は407.70ppm、世界における4月の平均二酸化炭素濃度は404.08ppmと400ppmを大きく超えており、日毎の二酸化炭素濃度も400ppmを切ることはなくなっています。
しかし、南極の観測所ではまだ一度も二酸化炭素濃度が400ppm台に乗ったことはありませんでした。
2016年5月23日までは。
2014年から2016年6月初旬までの南極における二酸化炭素濃度(単位: ppm)
Credit: NOAA
周囲を海に囲まれ、大陸上に研究目的以外の人間が生活していない南極は、地球上で人間活動の影響を最も受けにくい場所です。その南極で、5月23日に観測史上初めて二酸化炭素濃度が400ppmを超えました。
そして、南極の二酸化炭素濃度が400ppmを超えたのは、なんと400万年ぶりなのです。
これで、地球上のすべての場所(観測所がある全ての場所)で二酸化炭素濃度が400ppmを超えたことになります。
二酸化炭素濃度は、光合成によって植物に取り入れられるために下がり、植物の成長が止まると上昇するため、季節ごとに上下を繰り返します。年間の平均二酸化炭素濃度が400ppmを超えたマウナロアでも、8月から10月にかけては400ppmを切り、1年を通じてずっと400ppmを超えていたわけではありません。
南極の日毎や月間、年間すべての平均が400ppmを超えるまでにはまだ時間がかかりますが、たとえ日毎の平均でも400ppmを超えたのは歴史的であり、憂慮すべき出来事であるといえます。
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