米ハワイ州マウナロア観測所の二酸化炭素濃度は最速でも2150年まで400ppmを切らないという研究結果

  今年(2016年)は二酸化炭素濃度が記録的なペースで上昇していることや、南極の二酸化炭素濃度が400万年ぶりに400ppmを超えたことについて記事を書いてきましたが、人間活動による二酸化炭素の排出に加え、エルニーニョ現象に押し上げられることによって2016年の二酸化炭素上昇幅が観測史上最大となるため、私たちが生きている間に米ハワイ州マウナロア観測所の二酸化炭素濃度が400ppmを切ることはほぼないという研究結果(Betts et al. 2016)が科学誌「ネイチャー・クライメートチェンジ」に掲載されました。

  研究によると、米ハワイ州マウナロア観測所における直近10年(2006年から2015年)の二酸化炭素濃度の上昇幅は1年あたり2.1ppmで、人間による化石燃料の使用、森林開発、セメント生産などが原因と考えられています。そして、二酸化炭素濃度の上昇とエルニーニョ南方振動は密接な関係があり、エルニーニョ現象発生時には、熱帯地域が干ばつに陥り、森林火災が起こることによって二酸化炭素濃度が急上昇します。

  2015年のマウナロア観測所の年平均二酸化炭素濃度は400.9ppmで、観測史上初めて400ppmを超えました。2014年から、エルニーニョが始まった2015年にかけての1年間の二酸化炭素濃度上昇幅は2.27ppm(注)で、1年間の上昇幅が最も大きかった1997年から98年(今回と並んで史上最強レベルのエルニーニョの始まった年から終わった年)にかけての2.9ppmよりも小さくなっています。これは、2015年はエルニーニョの1年目で、1998年はエルニーニョの2年目にあたるためです(エルニーニョ現象が始まった翌年に二酸化炭素は大きく上昇します)。

(注)米海洋大気局(NOAA)のグローバル温室効果ガスリファレンスネットワークによる二酸化炭素濃度の増加速度は前後の年の1月から12月の平均濃度を比較して算出されていないため、この研究で用いられている上昇幅とは異なります。

Betts et al 2016 - CO2 levels forecast to pass 400ppm from Guardian.jpg
ハワイ州マウナロア観測所における二酸化炭素濃度の実測データ(水色)と予測値(青色)
Credit: Guardian

  研究チームのシミュレーションによると、エルニーニョが始まった2015年から、エルニーニョ発生から2年目にあたる今年(2016年)にかけてのマウナロア観測所における二酸化炭素濃度の上昇幅は3.15±0.53ppmで、過去最大の上昇幅になる可能性が高いと指摘しています。これを当てはめると、2016年の年平均二酸化炭素濃度は404.45±0.53ppmになります。過去10年の平均上昇幅が2.1ppmであることから、エルニーニョ現象による二酸化炭素濃度への寄与は約1ppmであると考えられます。

  研究チームは、例年二酸化炭素濃度が最も小さくなる9月の予測値もシミュレーションしています。2015年の年間平均二酸化炭素濃度は400ppmを超えましたが、9月の二酸化炭素濃度は397.50ppmと400ppmを切っていました。単純に過去10年間の平均上昇幅(2.1ppm)を加えると399.60ppmと400ppmを切りますが、2015年11月のニーニョ3.4海域の水温を元にシミュレーションした結果、今年9月の予想月間平均二酸化炭素濃度は401.48±0.53ppmとなり、月間だけではなく、日毎の平均二酸化炭素濃度も400ppmを切る可能性は極めて低いと結論づけています。

  今年の上昇幅が1997から98年のそれよりも大きくなる原因としては、1997年の人間活動による二酸化炭素の排出量が8.2GtCであったのに対し、2015年は10.3GtCと増加していることを挙げています。

  研究は今後も二酸化炭素濃度は上昇を続け、IPCCの二酸化炭素排出量が最も少ないシナリオ通りに排出量を削減したとしても、最短でも2150年までは二酸化炭素濃度が400ppmを切ることはないため、私たちが生きている間にマウナロアの二酸化炭素濃度が400ppmを下回ることはないだろうと結んでいます。

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【参照】
Betts, R., Jones, C., Knight, J., Keeling, R. & Kennedy, J. El Niño and a record CO2 rise. Nat Clim Change (2016). doi:10.1038/nclimate3063

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