イギリスのEU離脱が国内外の環境政策と気候変動対策に与える影響

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  イギリスのEUからの離脱が国民投票によって決まりました。すでに大手格付け会社の「スタンダード・アンド・プアーズ」と「フィッチ・レーティングス」がイギリス国債の格付けを引き下げるなど、経済的影響については多くの情報が発信されています。

  EUからの離脱がイギリス国内外における環境政策や気候変動対策に与える影響についてはほとんど報道されていませんが、今後数年かけて行われる離脱手続き中から、国内だけでなくEU、そして世界に決して小さくはない影響を与えることになると環境保護団体や科学者は警告しています。

イギリス国内の環境政策への影響
  EUからの離脱は、すでにイギリス経済に大きな打撃を与えています。そしてそれは今後も続くと予想されています。クリーンで安全な環境を作るためには、各方面からの投資は欠かせません。アメリカでは、リセッション時にクリーンエネルギー分野への投資が落ち込み、新しいテクノロジーの研究開発が滞りましたが、イギリスの環境分野、特にエネルギー関連におけるテクノロジーの調査・開発でもアメリカと同じことが起こり得ます。環境関連のテクノロジー開発が遅れることで環境政策に影響を与えると国民に安全な環境を確保できなくなり、国民の健康状態が悪化し、生産性が落ちることで経済的な打撃を受けることに繋がります。

  EUの大気汚染の基準は厳しいのですが、イギリスの多くの地域ではまだそのEUの基準を超える大気汚染があります。これまでイギリスはEUの厳しい基準を取り入れて大気汚染をなくそうとするのではなく、EUの基準を緩和させるための努力を続けてきました。EUを離脱すると足かせがなくなるため、イギリス国内の大気汚染の基準が緩和され、イギリスだけで4万人いるといわれている大気汚染による早期死亡者が増加する恐れがあります。

  リサイクルもEU基準を取り入れ、2001年には12%しかなかったイギリスのリサイクル率は2014年には45%まで順調に上昇してきました。2020年までに50%のリサイクル率達成を目標にしてきましたが、多くの人がEU離脱で逆戻りするのではないかと考えています。

  農業分野では、EUはミツバチの個体数減少の原因になっているといわれている除虫剤の使用を禁止していますが、かねてより禁止に反対してきた英全国農民組合と関係省庁は、EUを離脱に伴ってこれまで禁止されていた除虫剤や農薬の解禁に向けて動き始めるとみられています。また、漁業ではEUの制限がなくなるため、乱獲が行われる可能性があります。

  科学者の頭脳流出も懸念されています。これまではEU圏内では行き来が自由だった科学者たちがEU離脱に伴って自国に戻ったり、国外の優秀な科学者をリクルートしにくい環境になるためにイギリスの科学のレベルが落ちる可能性があるといわれています。また、科学者だけではなく、リサーチに必要な資金もEUから流入してきていました。イギリスの大学はこれまで研究助成金の16%をEUから受けてきましたが、それがなくなります。ガンに関する研究に特定すると、EUから過去10年間で1億7千3百万ドル(約177億円)の研究助成金を受けてきましたが、これもEU離脱後にはなくなってしまいます。

  イギリス国内の多くの分野、多くの産業がEU離脱による負の影響を受け、それに伴ってイギリス全体の利益が失われることが懸念されます。

国際的な影響
  上で述べたことの多くは、他の国にも影響を与えます。大気汚染に国境はありませんし、農業や漁業などの政策も他国へ著しい影響を与える可能性があります。イギリスにおけるテクノロジーの研究開発の遅れは、イギリス国内の損失だけでなく、EUや世界に小さくない影響を与えることになります。

  中でも、科学者や環境保護団体などが最も懸念しているのが、イギリスのEU離脱による気候変動対策への影響です。

  EUは世界で最も野心的な気候変動対策の目標を掲げ、世界をリードしてきましが、その中でもイギリスは2008年に世界で初めて法的拘束力のある「2050年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で80%削減する」という目標を設定するなど、リーダー的存在でした。

  イギリスが脱退することにより、世界で三番目に大量の温室効果ガスを排出しているEUは、パリ協定で定めた温室効果ガス削減目標を見直す必要があります。また、イギリスのリーダーシップがなくなることでポーランドなどの気候変動対策に消極的な国の発言力が増し、温室効果ガス排出量の削減が従来の目標に届かなくなることが懸念されています。

  また、イギリス国内に目を移すと、次期首相に最も近いとされ、イギリスのEU離脱運動を引っ張った元ロンドン市長のボリス・ジョンソンや、英独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ党首らは気候変動を否定しており、EU離脱後の国内の気候変動対策の遅れが国内外に与える負の影響が心配されるところです。

  経済と移民問題がイギリスのEU離脱問題で話題になりがちですが、環境政策、特に気候変動対策が国内外に与える影響は経済や移民政策と同様に深刻なものになりそうです。

【参照】

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