日本の気象庁、米海洋大気局(NOAA)、米航空宇宙局(NASA)による6月の世界平均気温が出揃い、すべての気象機関のデータは、世界が観測開始以来最も暑い6月、そして最も暑い上半期(1月から6月)を経験したことを示しました。この3つの気象機関の2016年1月から6月までの気温データ(合計18ヶ月)で各月の過去最高を記録しなかったのは、日本の気象庁による5月の世界平均気温のみで、それも前年を0.01℃下回っただけでした。
気象庁のデータでは、過去14ヶ月中13ヶ月が観測史上最高を記録、NOAAのデータでは14ヶ月連続で最高気温を更新中、NASAのデータでも世界平均気温は9ヶ月連続で観測史上最高を記録しているという、エルニーニョ現象の影響を受けているとはいえ、もうとにかく今年の上半期は地球規模で圧倒的に異常な暖かさでした。
その極めて異常な上半期の暑さを、NASAゴッダード宇宙研究所のディレクターで気候科学者のギャビン・シュミット氏がグラフを用いて総括しています。
1880年以降の1月から6月までの世界平均気温偏差(基準年は1880年~1899年)Credit: Gavin Schmidt
これは、NASAが観測を開始した1880年以降における各年の1月から6月までの世界平均気温の偏差(基準は1880年から1899年)を表したグラフです。緑の点線より上は平均気温の偏差が1℃を上回ったことを示しています。
昨年(2016年)も十分異常な暖かさだったのですが、今年の前半の世界平均気温は1800年代最後の20年間(産業革命に最も近い実測データを基準にすることで、産業革命以降の気温上昇をイメージしやすくするのが目的と思われます)の平均を約1.3℃上回りました。
昨年パリで開催された「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」で採択され、今年中の批准が期待される「パリ協定」は、2100年までの気温上昇を産業革命前から2℃を大きく下回る値を目標とし、1.5℃未満を努力目標としてひとつの目安にしていますが、その「1.5℃未満」が目前に迫っていることを実感させられる上半期になりました。まだ2100年まで80年以上あるというのに。
別記事にする予定ですが、NASAのデータでは、今年の2月と3月にはすでにその1.5℃のラインを超えています。シュミット氏は、来年の世界平均気温は今年を下回ると予想していますが、それほど遠くない未来に1.5℃のラインを超えるのは間違いありません。
1940年代後半以降の1月から6月までの世界平均気温偏差(グレー)とENSO南方振動(エルニーニョとラニーニャ)の影響を取り除いた同期間の世界平均気温偏差(赤)Credit: Gavin Schmidt
上のグラフは、先ほどと同じデータを基に、エルニーニョとラニーニャの影響(赤)を取り除いたデータ(赤線)を加えたものです。エルニーニョが発生した翌年にあたる1998年の記録的な暑さはほぼエルニーニョの影響によるものと考えることができますが、今年前半の異常な暑さについて、シュミット氏は昨年の記録を上回った原因の40%がエルニーニョの影響によるもので、残りの60%はバックグラウンドで進んでいる気候変動であると指摘しています。
Credit: Gavin Schmidt
このグラフは、1月から6月までの世界平均気温から、2016年の年間世界平均気温がどれくらいになるのか、推定値(1880年から1899年の平均気温との偏差)を表しています。緑色で書かれた「2016 Prediction」がそれで、偏差はだいたい1.16℃から1.37℃くらいでしょうか。
ここ数ヶ月間、どれくらいの確率で今年の世界平均気温が過去最高になるかをシミュレーションしてきたシュミット氏は、今年前半を終えた時点でも、99%の確率で2016年が昨年を上回って観測史上最も暑い年になるとツイートで述べています。昨年の異常な暑さを、前半が終わった時点で大きく上回り、99%の確率で過去最高を記録すると予想されているだけで桁外れに異常です。
エルニーニョの影響を受けた今年1年の各月だけが異常な暖かさになるのならば、気温上昇を長期的に見た場合(気温上昇が寄与した熱波などの極端な気象現象による被害を無理やり横に置いて数値だけを見た場合。気候変動は科学だけの問題ではないのでそんなの無理)、今年の数値だけで大騒ぎするのはナンセンスと言ってもいいのですが、観測史上最も暑かった15年(2016年は除く)のうち14年が21世紀に入ってから記録されている(20世紀は1998年だけ)ことが気候変動の進行具合を如実に表しており、エルニーニョの影響を受けた1年や2年の出来事と軽く扱うわけにはいかないのです。
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