熱波による死者のうち、人為的気候変動が原因の人数を特定したという研究結果


  熱波は、寒波と並んで気候変動との関連性が最も高い極端な気象現象のひとつで、これまで熱波と健康の関連性、熱波が人を死に至らしめる原因になっているという研究結果は発表されてきましたが、熱波によって多数の死者が出た場合に、どれだけ人為的気候変動が寄与していたのかを分析した研究結果はひとつもありませんでした。

  今回、オックスフォード大学などの研究チームが、2003年にヨーロッパを襲った大規模な熱波による死者のうち、人為的地球温暖化がどれだけ寄与していたかをコンピュータモデルで解析した研究結果(Mitchell et al. 2016)を科学誌「エンバイロメンタル・リサーチ・レター」に発表しました。

2003 European Heat Wave.jpg
Credit: Reto Stockli and Robert Simmon, based upon data provided by the MODIS Land Science Team. Public Domain.

  2003年の夏にヨーロッパで起こった熱波は、イギリスやフランス、ポルトガル、スペイン、オランダ、イタリア、ドイツ、スイスなどで猛威を振るい、7万人以上の死者を出す大規模なものでした。

  アメリカとイギリスの共同研究チームが、ヨーロッパの都市の中から、健康に関するデータが最も揃っている大都市であるイギリスのロンドンとフランスのパリを選択し、人為的な気候変動の要素を加えたコンピュータモデルと、自然変動のみのモデルの2種類を用い、数千回にわたってシミュレーション解析したところ、ロンドンの熱波による死者315人のうち64人(約20%)が、パリの熱波による死者735人のうち506人(約70%)が、人為的地球温暖化による熱波の激化が原因で亡くなったという結果が出ました。

  ヨーロッパ中で亡くなった方の多くは高齢者で、高い気温に対して元々脆弱であることに加え、それまでこれほどの規模の熱波を経験したことがなかったためにどう適応するための知識も少なく、また、風の通り道が少ないヨーロッパの街作りと、エアコンが普及していなかったこともあって、2003年の熱波では7万人以上の死者が出てしまったと研究の執筆者は指摘しています。

  また、今後も気温上昇が続けば熱波の増加と激化が予想され、熱波による死亡率も上がるのではないかと研究チームは懸念しています。

  このまま気候変動対策をとることなく、これまでと同じペースで温室効果ガスの排出を続ければ、現在は20年に一度の確率で起こる熱波が、2075年には毎年起こるようになるという研究結果もあり、熱波の激化と増加に加え人口も大きく増加すると予想されており、現在よりも多くの人、特に開発途上国の高齢者や幼児、女性、屋外労働者、ホームレスが最も深刻な影響を受けると考えられます。


  このような、予想される被害を未然に防ぐには、少しでも早く気候変動対策を実施し、気温上昇をできる限り抑えなければなりません。

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【参照文献】
Mitchell, D., Heaviside, C., Vardoulakis, S., Huntingford, C., Masato, G., Guillod, B., Frumhoff, P., Bowery, A., Wallom, D. & Allen, M. Attributing human mortality during extreme heat waves to anthropogenic climate change. Environ Res Lett 11, 074006 (2016).

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