【リオ五輪】 悲しい歓喜のダンス  海面上昇による祖国の危機を訴えるキリバスの重量挙げ選手

  ブラジルのリオデジャネイロで開催されているオリンピックの開会式で気候変動問題の映像が流され、地球規模の問題に世界がひとつになって取り組む必要性を訴えたことは記憶に新しいところです。

  また、今回のオリンピックでは、気候変動の深刻な影響を受けているマーシャル諸島やアフガニスタン、南スーダンの代表選手たちが産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑えるために気候変動問題についてメッセージを発信しているほか、開催国であるブラジルのサーフィン、サッカー、水球の代表選手たちも加わってTwitterで始めた #Sport4Climate というハッシュタグを用いたキャンペーンは、それらの国を超えて広がり始めています。

  また、ソーシャルネットワーク以外の方法を使って、リオオリンピックで気候変動問題への注意喚起を求めているアスリートがいます。


  キリバスという南太平洋の島しょ国をご存じでしょうか?

  33の環礁からなるキリバスには、約10万人が暮らしています。海抜が平均2メートルに満たないキリバスは水没の危機に見舞われており、政府はすでにフィジーに土地を購入し、最悪の場合は国民を移住させる計画を立てています。

  そのキリバスを代表する重量挙げ選手のデビッド・カトアタウは、見ている人たちが気候変動問題に少しでも関心を持ってくれることを願いながら、リオオリンピックで試技終了後に誰もが笑顔になるような歓喜のダンスを続けました。


  彼は、沈みゆくキリバスの存在をほとんどの人が知らないことを危惧し、ただ世界中の人々にもっとキリバスのことを知ってもらうために、試技失敗後にも笑顔で踊りました。

  彼は、昨年の国際大会で参加者に配ったオープンレターで、海面上昇がもたらす自国への深刻な影響を訴えました。カトアタウは、国際大会で得た報奨金で母親のために家を建てましたが、完成から数ヶ月後に、サイクロンによる高潮に流されてしまったそうです。また、彼を慕う子どもたちに対して、自分たちの国が海に沈んでなくなるのに、どうやって夢は叶うと嘘をつけばいいのかと苦悩を吐露しています。

  彼はオープンレターをこう締めくくっています。

「世界中の国々のみなさん、どうかお願いですからキリバスに何が起こっているのか見てください。絶対的な事実として、私たち自身が助かるための資金と資源を私たちは持っていないのです。私たちは、最初に消えてしまう存在です。民族が絶滅するのです。目を開いて、キリバス以外の海抜が低い太平洋諸国を見てください。それらの国々も、間もなく私たちと共に消えてしまうのです。」

  これは気候正義の問題です。

  私たちにも、できることはあるはずです。

  私たちには、気候変動によって存続が脅かされている国々や、深刻な影響を受けている国々とそこに暮らす人たちのために行動を起こす責任があるのですから。

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