珊瑚の白化を捉えた初めての映像(ちょっとだけ閲覧注意)


  温暖化とエルニーニョによる海水温の上昇などが環境ストレスとなり、珊瑚礁の白化が地球規模で起こっています。米海洋大気局(NOAA)によると、大規模な珊瑚の白化現象が3年連続で起こっており、過去にこのような例はないそうです。

  今年(2016年)5月には、豪グレートバリアリーフの珊瑚礁の93%が白化し、リーフの北部と中部では35%の珊瑚が死んでいるという研究結果が発表されています。

  また、海面上昇の影響で沈みゆく島しょ国として有名なインド洋のモルディブでは約60%の珊瑚が白化、南太平洋のキリバスでは80%の珊瑚が既に死んでしまったという調査結果もあり、地球規模で進行している珊瑚の白化と死滅は今後も続くとみられています。

Coral bleaching by NOAA.jpg
珊瑚が白化する過程(NOAA

  珊瑚礁の白化は、海水温の上昇、淡水や土砂などの流入、強い直射日光、干潮時の空気への露出などの強いストレスにさらされると、共生藻を排出して白化に至ります。

  今回、豪クイーンズランド工科大学の研究チームが初めて珊瑚が共生藻を排出し白化する様子を映像におさめることに成功し、その過程を科学誌「Coral Reefs(珊瑚礁)」に発表(Lewis et al. 2016)しました。

  研究チームがHeliofungia actiniformis(パラオクサビライシ)を入れた水槽の水温を12時間かけて26℃から32℃まで上昇させたところ、珊瑚が共生関係の藻であるSymbiodinium(渦鞭毛藻)を噴出し、白化していく様子を映像が捉えました。


  珊瑚は一度白化すると必ず死んでしまうわけではなく、また珊瑚に適した環境が回復すれば、活動を再開します。しかし、このまま2050年までに気温が産業革命前比で1.5℃上昇すれば世界の珊瑚の90%が、2℃の上昇で98%に白化のリスクが生じ、1.5℃未満に抑えられなければ、珊瑚の環境への適応は難しいという研究結果もあります。

  今後、気候変動によって海水温がどれくらいのペースで上昇するかにもよりますが、海洋の豊かな生態系を支える珊瑚礁の白化を最小限に抑えるために、国際社会は温室効果ガス排出量の大幅な削減に向けて最大限の努力をしなければなりません。

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【参照文献】
Lewis, B., Nothdurft, L. & Nothdurft, L. Expulsion of Symbiodinium by pulsed inflation under hyperthermal stress in Heliofungia actiniformis. Coral Reefs (2016). doi:10.1007/s00338-016-1473-5

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