炭素収支が1.5℃と2℃の壁を超えるのはいつ?

  『産業革命前からこれまでの気温上昇は何度なの?1.5℃にどれくらい迫ってるの?』で、世界平均気温が19世紀末から現在までに何度上昇しているのかを、米航空宇宙局(NASA)、米海洋大気局(NOAA)、そして日本の気象庁のデータを元に検証したところ、仮に今後数年間の気温が今年より低くなったとしても、現在の気温上昇ペースから見て2030年代半ばには1.5℃の壁を超えるのではないかという結論に至りました(2100年までの気温上昇を1.5℃未満に抑えるとか夢か幻かといったところです)。

  この記事では角度を変えて、温室効果ガスの排出量が現在のペースで続いた場合、1.5℃以上(とついでに2℃以上)の気温上昇を保証するラインをいつ頃超えてしまうのかを、気候変動関連のニュースやオリジナル分析を提供しているカーボン・ブリーフがIPCCのシナリオを用いて検証しているので紹介します。

Carbon budget ipcc table.png
2つのシナリオを用いた1870年以降&2011年以降における1.5℃、2℃、3℃の気温上昇に繋がる炭素収支を確率別にまとめた表。Source: Table 2.2 from IPCC AR5 Synthesis Report

  上の表は、IPCCの最新レポートに掲載されている2つの異なるシナリオに従って、1870年以降及び2011年以降における炭素収支(二酸化炭素以外の温室効果ガスを二酸化炭素に換算してあります)を、1.5℃、2℃、3℃の気温上昇に繋がる可能性別にまとめたものです。

  ここでは、1870年からの累積二酸化炭素排出量は置いておいて、2011年以降の二酸化炭素排出量を見てみようと思います。

  2つのシナリオがありますが、だいたい同じ炭素収支になっているのと、シンプルモデル(一番下の「Simple model, WGIII scenarios」)では気温上昇を1.5℃未満に抑えるシミュレーションが行われていないので、コンプレックスモデルの方で今後の見通しを見てみましょう。確率(66%/50%/33%)は、累積二酸化炭素を排出した場合に、それぞれの気温上昇に抑えることができる可能性を示しています。66%は66%以上(66%~100%)、50%は50%以上66%未満、33%は33%以上50%未満という意味です。

  まず、コンプレックスモデルで気温上昇を1.5℃未満に抑えるための累積二酸化炭素排出量(より可能性が高い66%)を確認すると、400GtCO2となっています。これは、二酸化炭素の排出量を400Gt未満に抑えれば、2100年までの気温上昇を1.5℃未満に抑えるチャンスが66%以上あるという意味です(400Gt未満でも1.5℃を超える可能性はあります)。つまり、400Gtを超えれば1.5℃の壁を超える可能性が34%以上になってしまうということです。

  では次に、累積二酸化炭素排出量がいつ頃400Gtに達してしまうのかを見てみましょう。世界の温室効果ガス排出量を分析・検証しているグローバル・カーボン・プロジェクトを元にアップデートしているカーボンブリーフのデータによると、2011年から2015年までの排出量の合計は195.38GtCO2で、1.5℃未満に抑えるために排出できる量である204.62Gtの約半分を使っています(2011年以降の1年あたりの排出量が約40GtCO2なので、2016年分を加えると半分を超えているのは確実でしょう)。

  5年間で炭素収支の半分を使ってしまったということは、このままではあと約5年で「2100年までの気温上昇を66%以上の確率で1.5℃未満に抑えるための二酸化炭素排出量(400GtCO2)を超えてしまう」ということです。カーボンブリーフは、2016年が始まった時点でそのリミッターを5年2ヶ月(2021年2月)で超えてしまうと予測しています。

  これは、「2100年までの気温上昇を66%以上の確率で1.5℃未満に抑えるためのリミッターを超えてしまうと、それ以降は排出量をゼロにするか、排出する場合はその温室効果ガスをすべてオフセットしなければならないため、ネガティブエミッションで大気や土壌や海から取り出してどこかに貯蔵する必要がある」という意味です。植物や海洋や土壌が取り込める限界を遥かに超える量の温室効果ガスを排出している現状では、ネガティブエミッションに頼らざるを得ませんが、まだそんな技術はありません。こんなこといいな、できたらいいなという範囲です。

  せっかくなので2℃未満に抑えるための排出量と残存年数も見ておきましょう。こちらの方は残り804.62GtCO2で、2016年の初めから20年3ヶ月で2℃未満のラインを超えてしまうそうです。つまり、現状の科学技術では2036年には2℃未満もアウトになります。

  やけくそで3℃未満を見ると、55年6ヶ月の残存年数ということなので、このままでは1.5℃未満どころか3℃未満も不可能になる可能性が高いようです。

  カーボンブリーフがそれぞれの気温上昇に抑えるために残された時間をまとめたグラフを作っているので、貼っておきます。残存期間は、2016年の年初からの年数です。

Carbon Countdown by Carbon Brief.jpg

  1.5℃未満や2℃未満に抑えるためには何が必要なのか、この目標を達成できる可能性がどれくらいあるのかについては、また別記事にしたいと思います。

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