水曜日(8月29日)深夜から木曜日にかけてハワイをかすめた熱帯性低気圧「マデリーン」がもたらしたのは、強い雨風と高潮だけではなかったようです。
ハワイ島のマウナロア観測所のスクリップス海洋研究所が、熱帯性低気圧が接近した8月29日の日平均二酸化炭素濃度が400ppmを切ったことを同研究所のブログで発表しました。同研究所のラルフ・キーリング氏(二酸化炭素濃度を表すグラフの名称「キーリング・カーブ」の生みの親であるチャールズ・キーリング氏の子息)によると、この二酸化炭素濃度の低下は一時的なもので、おそらく熱帯性低気圧の影響ではないかと述べています。
2016年8月29日のハワイ州マウナロア観測所における日平均二酸化炭素濃度。Credit: Scripps Institute of Oceanography
マウナロア観測所の二酸化炭素濃度が400ppmを切ったのは昨年の11月以来でしたが、累積二酸化炭素排出量の増加とエルニーニョ現象の影響によって昨年から今年にかけて二酸化炭素濃度の急激な上昇が見込まれていたため、マウナロア観測所で再び400ppmを切る可能性は極めて低いと考えられていました。その研究結果が科学誌に掲載されてからわずか2ヶ月半後に、一時的とはいえ再び400ppmを切ることになるとはおそらくだれも予想していなかったのではないでしょうか。
キーリング氏は、作業仮説としてこの一時的な二酸化炭素濃度低下の原因について、ハリケーン(後の熱帯性低気圧)が二酸化炭素濃度の低い空気を大量に巻き込んだためではないかと述べており、今後その作業仮説に基づいて分析を行うそうです。
観測史上初めてとなるハワイ島へのハリケーン上陸が現実味を帯びるような前例のない状況になるのですから、マウナロア観測所の二酸化炭素濃度が再び400ppmを切るという予測困難な現象が起こるのも、決して不思議なことではないのかもしれませんね。
極端な現象になれてしまうのがいいことかどうかについては疑問が残りますが……。
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