産業革命前からの気温上昇を1.5℃/2℃未満に抑えるためにはどうすればいいの?

  ここまで『産業革命前からこれまでの気温上昇は何度なの?1.5℃にどれくらい迫ってるの?』と『炭素収支が1.5℃と2℃の壁を超えるのはいつ?』で、産業革命前から何度気温が上昇しているのか、そして2100年までの気温上昇を産業革命前比で1.5℃と2℃未満に抑えるのを困難にする二酸化炭素排出量の壁を超えるのはいつ頃になるのかについて触れました。

  今年7月までの時点で1890年からの気温上昇は約1.3℃(本当の産業革命前からだとすでに約1.5℃)で、現在の二酸化炭素排出ペースが続けば2021年には1.5℃未満の壁を超える二酸化炭素排出量に到達、2030年代半ばには2℃未満の壁も超えてしまうことがわかりました。

  では、どうすればそれを回避することができるのでしょうか?

  できることはふたつあります。というか、このふたつを成し遂げなければ、産業革命前から2100年までの気温上昇を1.5℃未満/2℃未満に抑えることはできません。

How to keep global warming below 1.5C or 2C.png
どうすれば気温上昇を1.5℃未満/2℃未満に抑えることができるか。Credit: Mercator Research Institute on Global Commons and Climate Change

  ひとつめは、上のグラフでわかるように、温室効果ガスの排出量を今すぐ大幅に削減することです。21世紀半ばまでには温室効果ガスの排出量をゼロにしなければならないため、増加傾向にある排出量を今すぐに急激な右肩下がりにする必要があります。

  それでも、今後気温上昇が1.5℃の壁を超える量の二酸化炭素(2011年以降で400GtCO2)を排出した後も、排出量がゼロになるまで(2050年頃が目安)、数十年にわたって二酸化炭素の排出は続きます(現在の1年あたりの排出量は約40GtCO2)。

  そこでふたつめの条件です。ネガティブエミッションを行うために必要な技術を早急に開発して実用化し、超過分の二酸化炭素を大気から取り出してどこかに貯蔵しなければなりません。

  ハッキリとした数値がなかなか示されていないのですが、2014年の海洋と陸地による二酸化炭素吸収量は約25GtCO2なので、それを目安にした場合、余剰分の二酸化炭素のうち、自然界が吸収できる年間25GtCO2を超える部分を回収貯蔵する必要があります。

  植林による森林のCO2貯蔵量の増加、大気から取り出したCO2の地下への貯蔵、土壌が吸収するCO2の高効率化、鉄などの散布による海洋のCO2吸収量の増加など、様々な方法が考えられますが、どれくらいの効果があるのか、どのようなマイナス面があるのか(下手すると吸収源が排出源になる可能性もあります)などを慎重に見極めながら実用化を急がなければなりません。また、だれがやるのか、だれが費用を出すのか、負の影響が出た場合の補償や賠償をどうするのかなど、コスト面の問題もあります。つまり、相当困難な作業になります。

  これらの技術の中にはリスクが伴うものもありますが、実施が遅くなればなるほど、海面上昇や干ばつ、熱波など、気候変動によるリスクは高くなります。

  炭素ニュートラルな社会を作って未来の世代に手渡すためには避けられないリスクであり、技術開発から実行に至るまで、国際社会が協力して進めていく必要があるでしょう。

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