ノースダコタ州からイリノイ州を結び、1日あたり47万バレル以上の原油を運ぶといわれる全長約1,800kmのダコタ・アクセス・パイプラインの建設に反対し、パイプラインが居留区の近くを通過するスタンディングロック・スー族をはじめとする先住民グループがアメリカとカナダから集結して数週間にわたって抗議活動を行ってきましたが、先週末に建設業者側が番犬と催涙スプレーを使って抗議活動を阻止しようとする暴挙に出たことは記事にしたとおりです。
事業主の「エナジー・トランスファー社」から依頼を受けている建設業者の暴力行為に対し、衝突が起こった日曜日にスタンディングロック・スー族が一時的な建設中止命令を出すよう裁判所に訴えたところ、翌月曜日に先住民側の訴えを一部認め、パイプライン建設認可の取り消しを求めている裁判の判決が下るまで(9月9日までに判決が言い渡される予定)の一時的な建設中止命令を出しました。
日曜日に起こった建設業者と先住民グループの衝突は、工事が行われている私有地へ先住民グループがフェンスを越えて侵入したことがきっかけでした。彼らにそのような行動を起こさせたのは、ブルドーザーを用いて掘り返していたのが先祖の埋葬地や祈りを捧げる場所などスタンディングロック・スー族にとっては聖地であり、金曜日に先住民側が裁判所へ提出したばかりの資料に明記されていた場所であったためといわれています。建設業者側がヘリコプターや警備員、番犬などのの準備を整えたうえで、計画的に聖地に狙いを定めて工事を行っていると感じた先住民側には、それを阻止するためにフェンスを越える以外の方法は考えられなかったそうです。
一時的な建設命令が出た場所には、この衝突の起こった聖地が含まれていなかったため、裁判の結果が出るまで建設業者側と先住民グループの間の緊張は続くと思われます。
アメリカと先住民の歴史を考えると、「先住民グループが私有地に侵入したから」という建設業者側の言い分のおかしさが際立ちます。先住民を大量虐殺して土地を強奪し、自分たちにとってなんの価値もないと判断した土地を居留区として与えておいて、また彼らの聖地を侵略しようとしている側が私有地に侵入するなと主張するなど、狂っているとしか思えません。
500年以上の時を経てもまだ同じ過ちを繰り返しているアメリカは、過去からなにも学んでいないのでしょうか。
【あわせて読んでほしい記事】
この記事へのコメント