8月に米ルイジアナ州で洪水によって13人が死亡、3万人がレスキューによって救助され、6万戸を超える家屋損壊の被害が出る原因となった1週間の集中豪雨に気候変動が寄与していたことが、米海洋大気局(NOAA)などによる研究(van der Wiel et al. 2016)でわかりました。
ルイジアナ州における8月12日から14日までの降水量(単位: インチ[1インチ=約2.54cm])Credit: Climate Central
NOAAとプリンストン大学、オランダ王立気象研究所、クライメート・セントラルの研究チームは、高解像の気候モデルを用い、ルイジアナ州バトンルージュなどで8月10日から17日までに約760ミリもの雨を降らせ洪水の原因となった集中豪雨への気候変動の寄与を分析しました。
その結果、今回のルイジアナ州で起こった記録的な豪雨は、産業革命前と比較して気候変動の影響によって最低でも40%、最大で2倍起こりやすくなっており、降水強度が10%増加していたことがわかりました。また、このような集中豪雨がルイジアナ州で影響を受けた地域において発生する割合は約550年に一度ですが、もっと範囲を広げてメキシコ湾岸中部のどこかで同様の気象現象が起こる割合は30年に一度と指摘しています。
以前はこのような単発の極端な気象現象に気候変動が寄与していたかどうかを分析するのは不可能でしたが、最近は高機能のコンピュータで高解像のモデルを使い、産業革命前の気候の状態と温室効果ガスの影響で気温と海水温が上昇し、水蒸気も増加した状態(現在)を比較し、その頻度や強さの違いを算出する「attribution analysis(要因分析)」が行われるようになってきました。
研究チームが自然変動であるエルニーニョの関与を分析していないことについて批判的な気候科学者もいますが、AP通信が取材した著名な気候科学者のほとんどがこの研究結果を高く評価しているようです。
今回の研究は科学誌「Hydrology and Earth System Sciences」に投稿され、これから数か月かけて査読が行われるディスカッションペーパーであるため、最終的な評価は査読を経て正式に掲載されてからになると思われますが、論文執筆者らは査読前に一般向けに公開したことについて、政策決定者がこのような異常気象への対策を作る参考にしてもらいたかったためと述べています。
気温が上昇すれば、今回深刻な被害をもたらした集中豪雨のような極端な降雨現象の頻度と強度が大きくなると予測されていますが、洪水被害は地形や排水システム、土地利用など気候変動以外の要因によって防ぐこともできれば、被害が大きくなることもあります。
このような研究結果によって、多くの都市が被害を未然に防ぐための対策作りに役立ててくれることを願わずにはいられません。
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【参照文献】
van der Wiel, K., Kapnick, S. B., van Oldenborgh, G. J., Whan, K., Philip, S., Vecchi, G. A., Singh, R. K., Arrighi, J., and Cullen, H.: Rapid attribution of the August 2016 flood-inducing extreme precipitation in south Louisiana to climate change, Hydrol. Earth Syst. Sci. Discuss., doi:10.5194/hess-2016-448, in review, 2016.
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