ここまでの話
・ パイプライン建設に先住民が抗議の座り込み 環境正義問題へと発展
・ 【アップデート】ダコタ・アクセス・パイプラインに一時的な建設中止命令
ノースダコタ州からイリノイ州を結ぶダコタ・アクセス・パイプラインの建設を巡り、スタンディングロック・スー族をはじめ、100を超える先住民グループがノースダコタ州の居留区近くで約1か月にわたって抗議活動を行い、建設業者側が暴力によって抗議活動の阻止を図るなど緊張が高まっていましたが、2016年9月9日に米司法省、米陸軍、そして内務省は、先住民居留区への影響が十分に調査されるまで一部地域におけるパイプライン建設を一時的に中止するという共同声明を発表しました。
まず、9日午後にスタンディングロック・スー族がパイプライン建設中止を求めて起こしていた訴訟に対し、裁判所が訴えを棄却する判決を言い渡しました。
しかし、その約1時間後に米連邦3省庁によるパイプライン建設一時中止の共同声明が発表されたことで、判決に失望していた先住民グループとサポーターは活気づき、喜びを分かち合いました。
It's a victory for #NoDAPL activists after the Obama administration halted the Dakota Access pipeline. pic.twitter.com/YTJgvV7mKV
— AJ+ (@ajplus) September 10, 2016
共同声明は、居留区の環境に対する調査が十分に実施されるまでの間、スタンディングロック・スー族の居留区近くを流れるミズーリ川に造成されているオアへ湖の地下(パイプラインはミズーリ川の下を通す予定)及び周辺の米国陸軍工兵隊所有地における建設工事を中断し、事業主に対してオアへ湖の東西20マイル(約32km)の地域において、パイプライン建設工事を自主的に中断するように求めています。
この声明で最も画期的だったのは、今回のパイプライン建設だけでなく、今後のインフラストラクチャー整備にあたって、連邦政府が先住民の土地や資源、権利を守るために、彼らの声に耳を傾ける意思を示した以下の部分です。
Furthermore, this case has highlighted the need for a serious discussion on whether there should be nationwide reform with respect to considering tribes’ views on these types of infrastructure projects. Therefore, this fall, we will invite tribes to formal, government-to-government consultations on two questions: (1) within the existing statutory framework, what should the federal government do to better ensure meaningful tribal input into infrastructure-related reviews and decisions and the protection of tribal lands, resources, and treaty rights; and (2) should new legislation be proposed to Congress to alter that statutory framework and promote those goals.
インフラ整備に関連する調査や判断に対する先住民の声を意味あるものにするために現行法の範囲内で連邦政府が何をするべきなのか、または、先住民の土地や資源、条約で定めた権利を守るために連邦政府が議会に新たな法案を提出するべきなのかを、先住民と連邦政府が政府対政府の立場で協議するとしています。
この声明を受け、スタンディングロック・スー族のチェアマンであるデーブ・アーチャンボルト2世は「スタンディングロック・スー族と全米の先住民にとって歴史的な日となり、胸がいっぱいです。」と声明を発表しています。また、先住民の声が聞き届けられたことや、連邦政府に協議を持ちかけられたことについては満足しながらも、先住民の聖地と水を恒久的に守るための仕事はまだ終わっていないと決意を新たにしています。
彼の声明が示しているように、まだひとつのパイプライン建設工事が中断されただけで、彼らが長年にわたり苦しめられてきた米社会の構造的な不公正をなくすための道のりはまだまだ長いと思われます。
今日のオバマ政権による判断が、そのための小さな一歩になることを願わずにはいられません。
この記事には続編があります
◆ ダコタ・アクセス・パイプライン建設に出資している銀行 ~ 環境差別に手を貸す金融機関
◆ 先住民によるダコタ・アクセス・パイプラインの建設中止を求める訴えが棄却 一部で建設再開へ
◆ ダコタ・アクセス・パイプラインの現行ルートをオバマ政権が却下 ルート変更へ
◆ ダコタ・アクセス・パイプラインのルート変更決定は来年2月まで持ち越しへ
◆ トランプ政権がオバマ政権の判断を覆し、当初のルートでダコタ・アクセス・パイプラインの建設を認可へ 先住民側は法廷で争う意向
◆ 【ダコタ・アクセス・パイプライン】トランプ政権による建設認可に対する先住民側の建設一時停止請求を連邦地裁が却下 さらなる法廷闘争へ
◆ 【ダコタ・アクセス・パイプライン】 先住民側がパイプライン建設停止を求め、国家環境政策法などに基づいて再提訴
◆ 【ダコタ・アクセス・パイプライン】 米連邦地裁がトランプ政権の建設認可を違法と判断
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