ここまでの話
米ノースダコタ州からイリノイ州を結ぶダコタ・アクセス・パイプラインの建設を巡って、建設ルートの近くに居留区があり、1kmに満たない場所でパイプラインがミズーリ川の下を通過するスタンディングロック・スー族をはじめとする100をはるかに超える先住民グループから数千人が集結して抗議を続けた結果、環境アセスメントを再度実施し、スタンディングロック・スー族への影響がないと確認されるまで一部ルートの建設を一時停止するという声明がオバマ政権から発表されました。
その声明の中で、オバマ政権は建設の一時停止にかからない場所についても、事業主体に対して「パイプライン建設の自主的な一時停止」を呼びかけていました。
それに対し、パイプライン建設事業の主要企業であるエナジー・トランスファー社のCEOが建設プロジェクトの続行を宣言していたとおり、オバマ政権に一時停止命令を受けていない場所ではすでに建設を再開しています。
工事再開を受け、先住民グループが建設現場の「私有地」に侵入して抗議したために数十人の逮捕者が出ています。
ダコタ・アクセス社(エネジー・トランスファー社の子会社)は、建設工事の一時的な遅れによって4億3千万ドル(約440億円)の損害が出ると主張しています(根拠は示されていませんが)。
ダコタ・アクセス・パイプライン建設は、総額38億ドル(約3900億円)のプロジェクトといわれています。当然のことですが、金融機関の投融資なしではこの巨大なプロジェクトの資金調達は不可能です。
では、この先住民に対する環境差別・環境正義問題が明るみに出たあとも沈黙を守り、差別と不公正を助長するだけでなく、そこから利益を得ようとしている金融機関はどこなのでしょうか?
米環境NGOの「フード&ウォーター・ウォッチ」が、ブルームバーグ・ターミナルのデータを元に調査を行い、ダコタ・アクセス・パイプラインに投融資を行っている金融機関とその額を公開しています。
Source: Food & Water Watch
ダコタ・アクセス・パイプライン建設プロジェクトは、上図の4つのグループ企業から成ります。そして、大手銀行とウォール街の面々が投融資を行っています。
アメリカからはバンク・オブ・アメリカ、シティ・バンク、JPモルガン・チェイス、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックスなど大手中の大手が、海外からもドイツ、フランス、イギリス、カナダ、オランダ、スイス、ノルウェー、ブラジル、スコットランドから大手多国籍銀行が参加しています。
残念なことに、日本を代表する金融機関も名を連ねています。
パイプラインの建設に、住友三井銀行が2億6千5百万ドル(270億円)、三菱東京UFJ銀行が5億4千8百万ドル(560億円)、みずほ銀行が5億9千万ドル(602億円)、そして日興証券が1億2千万ドル(122億円)の投融資を行っています。
※ ドル円換算は2016年9月16日現在のレート。
歴史的に差別を受け、虐げられてきた無力なスタンディングロック・スー族をはじめとする先住民グループは、土地や水、資源、未来、人権や尊厳をかけて、世界で最も裕福な化石燃料産業だけではなく、パイプラインが将来的にもたらす利益をあてにして投融資を行っている金融機関とも闘っていることになります。
この環境正義問題に、わたしたちは無関係だと言えるのでしょうか?
この記事には続編があります
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