北極圏のあらゆる地域における氷の減少がホッキョクグマ存続の脅威に


  温暖化が他の地域と比較して2倍の速さで進み、減少を続ける海氷の影響を受けやすいことから、ホッキョクグマは地球温暖化の象徴として取りあげられてきました。

  海氷面積が減少したことによって、本来はほとんどの時間を氷上で過ごすはずのホッキョクグマの陸地で過ごす時間が増えたため、人間と遭遇する機会も増えるという研究結果も発表されています。

  急激に進む北極圏の温暖化と激減する海氷が、将来的にホッキョクグマを絶滅に追い込むのではないかという懸念が広がっています。

  そして今回、ホッキョクグマが生息する北極圏の19の地域すべてにおいて、海氷に覆われている日数が短くなっているという研究結果(Stern and Laidre 2016)を、米ワシントン大学の研究者が科学誌「The Cryosphere」に発表しました。

  海氷は、ホッキョクグマが生存するために重要な狩りを行う場所です。ホッキョクグマは、息継ぎをするために海上に浮かんでくるアザラシなどの海洋ほ乳類を、海氷の端で待ち伏せして捕獲します。海氷が減少すると狩りを行う場所が減り、栄養を十分にとることができなくなります。

Stern and Laidre 2016 - Fig 1 - 19 PBSG polar bear subpopulation regions.jpg
ホッキョクグマの生息域を19のサブグループに分割した地図。Source: Stern and Laidre., 2016

  研究者たちは現在のホッキョクグマの個体数を2万5千頭と推定し、北極圏を19の生息域(上図参照)に分割してそれぞれの生息域における春と秋の海氷面積の動向を調査しました。

  衛星による観測が始まった1979年から2014年までの海氷面積のデータを用いて、これら19の生息域における春の融氷時期と秋の結氷時期、そして年間を通じて海氷に覆われている日数の増減を算出しました。

  その結果、19のうち17の生息域で春の融氷時期が10年あたり3日から9日早まっており、また、秋の結氷時期については16の生息域で同じく10年あたり3日から9日遅くなっていたことがわかりました。

Stern and Laidre 2016 - Fig 12 - Trend map of the length of the summer season for the shallow parts of each PBSG region.jpg
19の生息域における春の融氷時期が早まった日数と秋の結氷時期が遅くなった日数の合計。日数は10年あたりの値。Source: Stern and Laidre., 2016

  上の地図は、上述した春に融氷時期が早まった日数と、秋に結氷時期が遅くなった日数を足した結果を表しています。すべての生息域で均等に変化しているわけではなく、ノルウェー北部とロシア沖のバレンツ海(紫の部分)と北極海盆(青の部分)でより顕著になっています。

  これらの日数を週に換算すると、氷がとけ始める時期の早まった日数と凍り始める時期が遅くなった日数の合計は1979年以降で3週間から9週間になります。この数値が最も大きかったのは先ほども述べたバレンツ海で17週間でした。

  夏期の海氷の密度も、ほぼすべての生息域で10年あたり1%から9%減少しています。また、1年のうち海氷に覆われている日数はすべての生息域において10年あたりおよそ7日から19日減少しており、その傾向が最も激しいのはバレンツ海で10年あたり45日も減少しています。

  研究者は、この研究結果が温室効果ガス排出量の削減や生態系保全のための政策作りに影響を与えることを望んでいると述べています。

  論文の結論部分で執筆者は今回の研究結果がホッキョクグマの個体数の行く末についてなにを暗示しているのかと自問してこう答えています。

  「ホッキョクグマの海氷への依存度を考えると、温暖化は彼らの(生物学的)持続性に脅威をもたらすなによりも大きな要因です。」

  ホッキョクグマにとっても、わたしたちにとっても残された時間はそれほど長くはありません。多くの気候モデルが、今世紀半ばまでには夏の北極圏から海氷が消えると予測しています。

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【参照文献】
Stern, H. and Laidre, K.: Sea-ice indicators of polar bear habitat, Cryosphere, 10(5), 2027–2041, doi:10.5194/tc-10-2027-2016, 2016.

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