東南アジアの熱帯林乱開発に投融資する大手金融機関たち ~ サプライチェーンを調査する責任はだれにあるのか


  米環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)とサプライチェーン・コンサルタント企業の「プロファンド」が共同で行った調査で、東南アジアで森林乱開発の原因となった原材料を扱う企業に対し、2010年から2015年までの間に世界の大手銀行などの金融機関が総額500億ドル(5兆円。現在のレートで換算)を超える投融資を行っていたことがわかりました。調査結果のデータベースは公開されており、だれでも閲覧可能で、日本語によるデータベース検索もできます。

  RANとプロファンドは、トーマスロイター通信とブルームバーグの金融データを用いて、東南アジアでパーム油、木材、紙パルプ、ゴムを生産するために熱帯林を乱開発しリスクを高めている事業主を取引先としている世界各国の企業と、それらの企業に投融資を行っている金融機関およびその額を調査しました。

RAN 2016 - Financing for deforestation from 50 banks.jpg
東南アジアの熱帯林のリスクを高める産品を取引している50企業に対する各国金融機関等による投融資額(単位: 10億ドル)。表の日本語表記は無視してください。

  その結果、日本の金融機関からはそれらの企業に約41億ドル(4,100億円)の資金が投入されていたことが判明しています(上の表を参照)。その他の国では、中国が62億ドル(6,200億円)、イギリスが31億ドル(3,100億円)、アメリカは30億ドル(3,000億円)の投融資を行うなど、2010年から2015年までに行われた投融資の総額は500億ドル(5兆円)を超えています。

  下の動画を見れば、大まかに問題を把握できると思います。


  すべての熱帯林開発が違法なわけではありません。しかし、『パーム油の環境正義問題』で触れたように、東南アジアにおける熱帯林の乱開発は野焼きが原因の大気汚染による健康被害(つい先日、熱帯林開発が原因の大気汚染によって早死にした人が2015年だけで約10万人にのぼったという研究結果が発表されています)だけでなく、気候変動の促進、低賃金労働や児童労働、先住民族の迫害、地域住民に対する暴力事件などの原因にもなっています。また、オランウータンやトラなど希少動物の生息地を奪い、絶滅の危機に追い込んでいます。

  熱帯林開発企業や、先ほど挙げたパーム油や木材、紙パルプやゴムなどを生産する企業がこのような違法行為や倫理・公正に反する行為をおこなわないように、これらの企業から産品を買い取る側の企業がサプライチェーンを厳しくチェックすればいいだけなのですが、法的な義務がないために徹底している企業はほぼ皆無といっていいでしょう。サプライチェーンの不正をなくせば、流通段階で商品の値上がりにつながることも原因のひとつと考えられます。

  さて、日本の主な金融機関の調査結果を見ていきましょう。

RAN 2016 - Mizuho Financial Group.jpg

  まずはみずほファイナンシャルグループ。熱帯林をリスクにさらしている主な取引先は、丸紅、王子ホールディングス、伊藤忠商事で、投融資額はそれぞれ約5億ドル(500億円)、2億8千3百万ドル(283億円)、1億7千2百万ドル(172億円)です。

RAN 2016 - Mitsubishi.jpg

  三菱UFJファイナンシャルグループが最も投融資を行っている企業は丸紅で3億7千2百万ドル(372億円)でした。

RAN 2016 - Mitsui.jpg

  最後は三井住友ファイナンシャルグループ。王子ホールディングスが最大の顧客で、投融資額は2億3千5百万ドル(235億円)にのぼります。

  これらの金融機関に既視感があるのは『ダコタ・アクセス・パイプライン建設に出資している銀行 ~ 環境差別に手を貸す金融機関』にも同じ面々が名を連ねていたからですね。

  それぞれの画像右下の点数(熱帯林のリスクをなくすために行っているサプライチェーンのチェック)は、30点満点中のスコアです。見事に10点が並んでいるうえに、3グループともサステイナビリティに関する国際合意に署名はしているものの、サプライチェーンの細かいチェックは行っていないという共通点があります。

  これらの金融機関が投融資を行った企業の取引先がどんな問題を起こしているのかについては、データベースを公開しているサイトで「影響を知る」をクリックし、「インドフード(サリム・グループ)」、「IOI コーポレーション」、「コリンティガ・フタニ」のケース解説を読んでみてください。どの金融機関が投融資を行っているのか、これらの企業の主な取引先はどこなのか、そして自分たちの生活とどのようなつながりがあるのかがわかると思います。

  わたしたちもまた、消費者として問題の一部に組み込まれているのです。

  最後に、データベースに掲載されていた日本のすべての金融機関や保険会社等をあげておきます。最初の1件の投融資額が最も多い金融機関から順番に並んでいますが、複数回データベースに出てきた金融機関もあるため、投融資の総額が大きい順番にはなっていません。

農林中央金庫、東邦銀行、京葉銀行、山陰合同銀行、十六銀行、T&Dホールディングス、野村グループ、足利銀行、山口フィナンシャルグループ、大和証券、日本政策投資銀行、北國銀行、山梨中央銀行、山形銀行、みちのく銀行、広島銀行、七十七銀行、青森銀行、中京銀行、肥後銀行、千葉銀行、朝日生命保険相互会社、東海東京フィナンシャル・ホールディングス、岡三証券、福井銀行、信金中央金庫、岩手銀行、静岡銀行、宮崎銀行、大分銀行、栃木銀行、八十二銀行、りそなホールディングス、十八銀行、大垣共立銀行、山陰合同銀行、西日本シティ銀行、京都銀行、百十四銀行、池田泉州ホールディングス、ほくほくフィナンシャルグループ、東日本銀行、JA兵庫信連、八千代銀行、阿波銀行、伊予銀行、常陽銀行、住友生命保険、南都銀行、日本生命保険、四国銀行、国際協力銀行、オリックス、愛知銀行、武蔵野銀行、東京都民銀行、鹿児島銀行、群馬銀行、百五銀行、ふくおかフィナンシャルグループ、三重銀行、中国銀行、じもとホールディングス

  このような不公正を減らすために、個人レベルでできること、個人レベルで終わらせないためにできることを考えなければなりません。

  世界のどこかで起こっている不公正や不正義は、すべての地域にとっての脅威なのですから。

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