イネ科の植物は気候変動による環境の変化についていけないという研究結果


  気候変動の影響は、地球上に存在するすべての種に及びます。わたしたちの栄養源になる食物の原材料である動植物も気候変動の影響を大きく受けます。これまでに、このブログでもコーヒーやワイン、パンプキンにその影響が出始めているという記事を書きました。

  今回、イネ科の植物の気候変動による環境の変化への適応力を調べたところ、ほとんどの種が気候変動の進行についていけないという米アリゾナ大学の研究チームによる研究結果(Cang et al. 2016)が、科学誌「Biology Letters」に掲載されました。

  研究チームは、麦や米、トウモロコシ、モロコシなど、イネ科の236種の植物が、気候モデルの予測による2070年の気候にどれくらいの速さで適応できるのかを調べたところ、ほとんどの種が適応できる速度と比較して、気候変動による環境の変化が5,000倍、極端な場合には20,000倍を超える速さで進むことがわかりました。

  イネ科の植物は全世界における人口の約50%の栄養源となっているため、気候変動による環境の変化に対応できない場合、増加する人口に十分な栄養が行き渡らない恐れがあります。

  なお、研究チームによると、今回の研究は野生種だけを対象にしているものの、栽培品種についても適応力に差が見られるとは考えられないと指摘しており、気候変動による著しい気温上昇が予想される今世紀後半に穀物の収穫量が減少することによって世界的な食糧危機が起こる可能性があります。

  また、これらの植物の栽培は気候に大きく左右されるため、気候の変化に対応するテクノロジーを持たない開発途上国では農家が深刻な打撃を受けることが懸念されます。

  研究チームは、これらの種に絶滅の恐れがあるかどうかについては言及していませんが、気候変動にあわせて耕作可能地域が移動した場合、ある地域から特定の穀物が消えることになると指摘しています。

  米を主食にしている日本は、今回の研究結果が示すとおりの現象が起こるようなことがあれば、大きな影響を受けることになりそうです。

  野心的な気候変動対策を実施する以外に、世界的な食糧危機や生態系の急激な変化を避けるための方法はないでしょう。

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【参照文献】
Cang, F. A., Wilson, A. A., & Wiens, J. J. (2016). Climate change is projected to outpace rates of niche change in grasses. Biology Letters, 12(9), 20160368. http://doi.org/10.1098/rsbl.2016.0368

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