2015年にフランスのパリで開催された「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」において196か国が合意した「パリ協定」は、その後191か国が署名し、年内に発効できるかもしれないという雰囲気が漂っていました。
その「できるかもしれない」を「できそう」に変えたのが、9月初旬のG20開催を前にしたアメリカと中国のパリ協定同時批准でした。世界1位と2位の温室効果ガス排出大国で、あわせて世界全体の約38%の温室効果ガスを排出しているこのふたつの国の批准なしでの発効は事実上不可能だったため、この2か国の同時批准が勢いをつける形となりました。
そして「できそう」が「これもうできるでしょ」に変わったのが、9月21日にニューヨークの国連本部でパリ協定の年内発効をめざすために開催された会合で、ブラジルやメキシコなど31か国が批准したことでした。これによって協定の批准国は60か国になり、「55か国以上が批准すること」という発効要件のひとつをクリアしました。
パリ協定のもうひとつの発効要件は、「批准国の温室効果ガス排出量が全排出量の55%以上を占めること」なのですが、このあとにマリが加わった計61か国の排出量の合計は47.79%で、あと7.21%で発効できるところまできていました(下の地図を参照)。
ピンクはパリ協定の署名国。濃い緑はパリ協定の批准国(画像上では「協定に参加済み」となっています)。Source: World Resource Institute
ここで一応日本について触れておくと、この時点では批准はおろか臨時国会で環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を優先させるためパリ協定についてはめどもたっていない状態でした。日本の排出量は全体の3.79%なので、ここで批准を表明しておけばへなちょこでもリーダー国のひとつとしての面目を保つことはできたかもしれません。
さて、国際社会の流れから脱線している日本の話で脱線してしまいましたが、話を戻すと9月25日に総排出量の4.1%を占めるインドが10月初旬の批准を表明し、「これもうほぼいけたんちゃうん?」というところまでこぎつけました(批准書を提出してないのでまだ公式な数値には反映されていません)。
ここで日本が批准を表明すれば、パリ協定の年内発効を決定づけた国として存在を示すことができるチャンスだったのですが、その座を奪っていったのは排出量の12.1%を占めるEU(欧州連合)でした。EUは9月30日に、10月初旬の一括批准を表明し、これによって「55%以上」の要件をクリアすることが確実となりました。
パリ協定は、総排出量55%を占める55か国以上が批准をしてから30日後に正式に発効するため、10月初旬にインドとEUが批准すれば、年内の発効が決定的になります。
最後に日本についてもう一度触れると、つまり日本は「別に批准しなくても発効できるからどうでもいい」という存在になってしまったと言っても過言ではなく、発効後に行われる国際的な交渉の中で、日本の発言力が著しく低下してしまうことが懸念されます。
この批准の遅れは、人為的気候変動の原因を作ってきた大量排出国のひとつとして、大変情けない、恥ずべきことです。
【10月2日追記】
「インド独立の父」マハトマ・ガンジーの誕生日でもある10月2日にインド(総排出量の4.1%)がパリ協定の批准手続を完了し、これで62か国&総排出量の51.89%まで達し、55%のラインまであと3.11%となり、7日までに批准する予定のEUが加わると、11月上旬の発行が確実となります。
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