Credit: Joe Brusky
※ ここまでの話
ノースダコタ州からイリノイ州を結ぶ全長1,800kmを超えるダコタ・アクセス・パイプラインの建設は、米先住民であるスタンディングロック・スー族の居留区から1kmに満たない場所でミズーリ川に造設されたオアへ湖の地下を横切るルートが予定されていましたが、12月4日に認可庁である米陸軍工兵隊がミズーリ川の地下にパイプラインを通すための土地利用権を認めない判断を下し、一般市民と先住民の意見を取り入れる形での環境影響評価報告書作成を伴うルート変更の予定を先住民側に伝え、数か月にわたって抗議活動を続けてきた先住民グループとその支持者らに一時的な安堵が広がりました。
しかし、テキサス州ダラスに本社を置くパイプライン建設事業主体のエナジー・トランスファー・パートナーズ(以下ETP)は、オバマ政権の判断を不服としてすぐにワシントンDCのコロンビア地区裁判所に同ルートでの建設を認めるように訴えを起こしていました。
そして、12月9日(金)に同裁判所において意見陳述が行われ、ETP側の弁護士は2017年1月の公判開始を提案しましたが、ジェームズ・ボースバーグ判事はオバマ政権に対し、同ルートでのパイプライン建設を認めない理由を1月6日までに提出するように求め、公判を2月以降に行う決定を下しました。
ただし、同判事は同パイプライン建設に賛同を表明しているドナルド・トランプ氏が大統領に就任することによって、今回の決定が事実上意味を持たなくなる可能性も示唆しています。この発言は、もしもトランプ氏が就任後すぐに同ルートによる建設を容認する大統領命令を出すなどの措置を取った場合、今回のETPによる訴えに基づく公判を続ける必要がなくなることを意味しています。
スタンディングロック・スー族側は、オバマ政権の決定を受け、ETPやトランプ氏の大統領就任後の動向を見守る意向を表明していますが、環境法令に詳しい法律家の間でも今後の見通しについては不透明であるという認識が多く、先住民側にとってはまだまだ安心できる状況ではありません。
ただ、今回のコロンビア地区裁判所によって、少なくともトランプ大統領誕生後までは、ETPが却下されたミズーリ川の地下のパイプライン建設を再開する可能性は低くなったと言えるでしょう。
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