2017年は観測史上3番目の暑さに  英気象庁予想

  世界の主要気象機関による公式なデータはまだ発表されていませんが、2014年と2015年に続いて2016年の世界平均気温が3年連続で観測史上最高を更新するのは間違いありません。

  そこで気になるのは、「2017年はどうなるの?また観測史上最高を更新するの?」というところだと思います。

  英気象庁が昨年末に発表した世界平均気温の予想によると、2017年は2016年、2015年に次いで観測史上3番目の暑さになるそうです。

  つまり、今年も暑い、と。

UK Met Office - 2017 Temp Forecast.png
英気象庁による2017年の予想世界年間平均気温(単位: ℃)。Credit: Met Office

  グラフ右端の緑の部分が、2017年の予想平均気温です。英気象庁は、今年の世界平均気温が1961年から1990年までと比較して0.75℃(0.63℃~0.87℃)高くなると予想しています。昨年の予想が同0.84℃(0.72℃~0.96℃)だったので、2017年の世界平均気温は2016年よりも0.09℃低くなるということです。この値は2015年よりもわずかに低いため、英気象庁は2017年が観測史上3番目に暖かい年になると結論づけています。

  また、昨年9月に2017年が観測史上3番目の暑さになると予想していた、米航空宇宙局(NASA)ゴッダード宇宙研究所のギャビン・シュミット氏が12月に更新したデータ(連続ツイート 12345)によると、英気象庁と同じ基準年と比較して、2017年は0.73±0.13℃(0.6℃~0.86℃)平均気温が高くなると予想しています。この値はほぼ英気象庁と同じです。

  中間値(0.73℃)では観測史上3番目の暑さになりますが、上限と下限の範囲にある観測史上2番目から5番目のいずれかに落ち着くだろうとシュミット氏は指摘しています。

  2015年と2016年は、1997年から1998年にかけて猛威を振るったものと同程度まで勢力を強めたエルニーニョ現象の影響を受けたことも3年連続で観測史上最高の世界平均気温を更新した原因のひとつではありますが、それでもエルニーニョの寄与分は0.14℃(シュミット氏)から0.2℃前後(英気象庁クリス・フォランド氏)と言われており、観測史上最も暑かった上位17年のうち16年が今世紀に入ってから記録されていることからも、気候変動による長期的な気温上昇が大きな要因であることがわかります。

NASA_NOAA_JMA Combined Temp Anomalies to 1891-1920 as of 201611.jpg
NASA、気象庁、NOAAを統合した各月までの世界平均気温の偏差(基準年は1891年から1920年。単位は℃)。赤い横線はIPCCがパリ協定で努力目標とした2100年までの気温上昇1.5℃のライン。

  上のグラフは、NASA、日本の気象庁、そして米海洋大気局(NOAA)のデータを統合した後、1891年から1920年を基準年として偏差を算出し、グラフ化したものです。このグラフを見れば、1998年から2016年にかけて気候変動が進行していることがよくわかります。

  2016年と1998年は、最強レベルのエルニーニョ現象の2年目にあたります。エルニーニョによる影響がほぼ同規模だったこの2年を比較すると、1998年から2016年にかけて気温が約0.3℃上昇しています。気温に大きな影響を与えるその他の自然変動が見当たらないため、この上昇分は気候変動によるものと考えられます。

  また、このグラフの中で2014年はエルニーニョ現象とラニーニャ現象の影響を受けていない年にあたります。つまり、気候変動による温暖化が進行していないと考えた場合、2014年の気温が1998年を上回ることはないはずなのに、エルニーニョの影響を受けていない「普通の年」だった2014年ですら、1998年の気温を約0.09℃上回っているのです。

  次のエルニーニョ現象がいつ発生するのかも、発生した場合にどれくらいの強さになるのかも現時点では予想できませんが、もしもそのエルニーニョが1998年と2016年の規模まで成長し、気温を低下させる大きな自然変動がなければ、エルニーニョ発生の翌年が観測史上最も暑い年になるのは間違いないでしょう。

  2017年を基準に気候変動がどれだけ進んでいるのかを確かめるとすれば、今回と同規模だった1998年のエルニーニョ現象が終息した翌年にあたる1999年と比較するのが適当だと思われます(ラニーニャ現象の影響の大きさは違いますが)。

  3年連続で世界平均気温が観測史上最高を記録したことを過小評価するつもりはありません。しかし、自然変動の影響を受けて短期的に気温が上下するのはよくあることですし、科学的にみれば短期的な変動は大きな問題ではありません(短期変動でもそれに伴う極端な気象現象などによって人や自然環境が大きな被害を受けるため、科学だけで割り切っていい問題ではありません)。

  気候変動では、2017年が観測史上3番目の暑さであれ、5番目の暑さであれ、バックグラウンドの長期的な気温の変化に注目することが最も重要なのです。


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