2016年のアメリカは観測史上2番目の暑さ 世界と地域毎の気候の違い

  エルニーニョ現象の影響もあって、2016年の世界が観測史上最も暑い年になるのは確実なのですが、米航空宇宙局(NASA)や米海洋大気局(NOAA)、気象庁など主要機関からの公式な発表はまだ行われていません。

  しかし、EU(コペルニクス)の発表によると、2016年の世界平均気温は2015年を約0.2℃上回って観測史上最高を記録しています。また、不確かな要素が大きく精度に問題がある衛星による観測データでも、昨年と同様エルニーニョ現象の2年目だった1998年を0.02℃上回って過去最高を記録しました。

  このブログで毎月世界平均気温の情報を更新している主要3機関の発表を待つとして、今回はアメリカ本土における2016年の年間平均気温を見てみましょう。

US Average Temperature 201601-201612.jpg
1895年以降の米本土における平均気温の偏差(基準年は1901年から2000年。単位は華氏)。Source: NOAA

  NOAAの発表によると、米本土の2016年は20世紀の平均気温よりも約1.6℃高い12.72℃で、過去最高だった2012年よりも0.22℃低い観測史上2番目の暑さとなりました。なお。これで1997年以降、米本土の気温は20年連続で平年を上回っています。

  また、2016年にアメリカで被害額が10億ドル(約1140億円)を超える極端な気象現象が15件起こり、被害総額は460億ドル(約5兆3千億円)を超えています。これは、10億ドル以上の損害を出した気象現象の記録を取り始めた1980年以降の37年間で、2011年に次ぐ大きな被害総額となりました。

201601-201612 Statewide Average Temperature Ranks.gif
米本土における2016年の年平均気温の順位(期間は1895年から2016年)。「122(赤)」が観測史上最高。Source: NOAA

  2016年の米本土は、すべての州で観測史上7番目以内の暑さ(最も順位が低いのがオレゴン州の観測史上7位)を記録し、本土48州のうち半数の24州が観測史上3番目以内の暑さとなりました。

201601-201612 Statewide Minimum Temperature Ranks.gif
米本土における2016年の年平均最低気温の順位(期間は1895年から2016年)。「122(赤)」が観測史上最高。Source: NOAA

  これは、2016年の米本土各州における年平均最低気温の順位を表した地図です。6州が過去最高を記録するなど、年平均気温と比較して、最低気温の方が高くなっていることがわかります。平均気温が上昇すると最低気温が高くなる傾向があるため、温暖化の進行を如実に表していると言えます。

  米本土以外では、近年気温の上昇が著しいアラスカ州の年平均気温が観測史上最高を記録しています。

  さて、2016年の世界平均気温が2015年を上回って3年連続で観測史上最高になるのは確実ですが、米本土は2012年に次ぐ2番目の暑さと、世界と比較すると短期的な変動に違いが見られます。地球規模ではなく局地的なレベルで見ると、長期的な温暖化傾向は同じでも、自然変動の影響の受け方が違うなど、気温の変化には地域差があります。

Hottest 10 years on record of global, U.S. and Japan.jpg
世界・アメリカ・日本の平均気温歴代上位10年。世界と日本の2016年の平均気温は暫定。日本の2010年と2007年はタイ記録。Source: NOAA(世界)NOAA(アメリカ)気象庁

  上の表は、NOAAと気象庁のデータを元に、世界とアメリカ、日本の平均気温を高い方からランク付けしたものです。赤字は、世界、アメリカ、日本のすべてで10位以内に入っている年です。エルニーニョの2年目だった1998年と2016年、そして2015年以外は、暑かった年にばらつきが見られます。

  特に、米本土では1921年(大正10年)や1934年(昭和9年)がトップ10に入るなど、世界の平均気温とは著しく違います。日本も、1990年が観測史上2番目に暑く、1990年代が4年ランク入りするなど、こちらも世界とは違う傾向が見られます。

  このように、地球規模では上位10位のうち1990年代がひとつしかなく、近年の温暖化傾向が顕著であるのに対し、アメリカや日本などの地球の中では小さな一部の地域だけに特定すると、気温の上昇傾向には様々なバリエーションがあるため、一部の地域の短い期間(30年に満たない期間)に注目しても全体像を把握するのは難しいのです。

にほんブログ村 環境ブログ 地球環境へ

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック