※ ここまでの話は以下のリンクから
◆ パイプライン建設に先住民が抗議の座り込み 環境正義問題へと発展
◆ 【アップデート】ダコタ・アクセス・パイプラインに一時的な建設中止命令
◆ 米連邦3省庁がダコタ・アクセス・パイプライン建設の一時中止を発表
◆ ダコタ・アクセス・パイプライン建設に出資している銀行 ~ 環境差別に手を貸す金融機関
◆ 先住民によるダコタ・アクセス・パイプラインの建設中止を求める訴えが棄却 一部で建設再開へ
◆ ダコタ・アクセス・パイプラインの現行ルートをオバマ政権が却下 ルート変更へ
◆ ダコタ・アクセス・パイプラインのルート変更決定は来年2月まで持ち越しへ
ダコタ・アクセス・パイプラインの建設予定ルート。Credit: Inside Climate News
先住民居留区付近でミズーリ川に造成され、米陸軍工兵隊が所有しているオアへ湖の地下で川を横切るための土地利用権を認めない旨の判断が昨年12月にオバマ政権によって下され、別ルートでの建設に際し、「一般市民の意見を反映させた環境影響評価報告書(EIS)を作成するのが最良の方法」として1月18日から2月20日まで、広く意見を募集していました。
ところが、ドナルド・トランプが大統領に就任後すぐ(1月24日)にダコタ・アクセス・パイプラインとキーストーンXLパイプラインの建設を促進する旨の大統領令を出し、その中で米陸軍工兵隊に対して昨年7月の環境影響評価に基づいたダコタ・アクセス・パイプラインの建設の認可を求めていたため、すでに公開されているEISがどうなるのかなど、先の見通しが立たない状態になりました。
その1週間後、1月31日に米陸軍工兵隊のトップが当初のルートでのパイプライン建設を認可するように部下に指示を出したことから、オバマ大統領によるルート変更の決定が覆されるのは確実とみられていました。
そして、その1週間後の2月7日に、米陸軍次官補からアリゾナ州選出のラウル・グリハルバ米連邦下院議員に宛てた書簡の中で、トランプ大統領の命令に従い、エナジー・トランスファー・パートナー社に対してオアへ湖周辺の土地利用権を認める旨を伝えました。
その書簡の中では、利用権の期間は30年で、早ければ現地2月8日(水)には米陸軍工兵隊より公式に最終的なパイプライン建設認可が下りることなどが明記されています。これにより、現在も公開中のEISも打ち切られる見込みです。
この情報を受け、スタンディングロック・スー族は声明を発表しています。その中で、チェアマンのデーブ・アーチャンボルト2世は、近日中に下されるであろう建設認可について、先住民に対する公平でバランスが取れた合法的なパイプライン建設決定過程を損ねるものであり、EISの打ち切りは間違いであるとトランプ政権を非難しています。
また、スタンディングロック・スー族の弁護士はトランプ政権の決定について、オバマ政権と交わした、先住民の自治権を守り、更なる環境影響評価やルート変更の検討を省略した形での土地利用権は認めないという約束を反故にするものであり、米連邦政府が先住民に対して歴史上繰り返してきた、自治権を蔑ろにする「約束違反」のひとつであるため、トランプ政権はその責任を法廷で追及されることになると述べています。
今後は、現行ルートでのパイプライン建設を阻止するために、EISの打ち切りが違法かどうかを法廷で争うことになります。スタンディングロック・スー族は、もしもパイプラインが建設された場合には、操業を停止させるための方策を検討するとも述べており、パイプライン建設を巡る先住民と、米政府及び化石燃料を推進する共和党が支配している米連邦議会との争いはまだ終わりが見えてきません。
アーチャンボルト2世はこう述べています。
「先住民として、わたしたちはまた打ちのめされました。でも、わたしたちはまた立ち上がり、はじめて接したときからわたしたちを苦しめてきたアメリカ人の強欲と腐敗を乗り越えてみせます。全米の先住民部族に対し、結束し、ひとつになって抵抗することを求めます。トランプ政権下において、わたしたちの権利、そしてわたしたちをわたしたちたらしめているすべてが危機に瀕しています。どうかわたしたち部族の意思を尊重して、ここスタンディングロックに来るのではなく、修正条項第1条の権利を行使して、それぞれの州都、州議会議員、そして連邦政府とたたかってください。」
これは単にパイプライン建設の是非を巡る問題ではありません。数百年にわたって続いてきた、米連邦政府と先住民グループの人権と自治権を巡る問題でもあります。また、化石燃料に依存した生活を続ける限り、今後も先住民だけでなく、社会的弱者が不公平な負担を強いられることになります。
そして、世界の大手金融機関が多額の投融資を行っているダコタ・アクセス・パイプラインの建設は、わたしたちにとっても、決して他人事ではありません。
以前も述べましたが、環境問題や人権問題に、「彼らの問題」は存在しません。すべて、「わたしたちの問題」なのです。
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【参考記事】
Trump to give green light to Dakota Access, Keystone XL oil pipelines|Washington Post
Army Corps ordered to issue final Dakota Access pipeline permit, two lawmakers say|Washington Post
Trump administration to approve final permit for Dakota Access pipeline|Washington Post
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