南極のラーセンC棚氷が数か月以内に崩壊の可能性  福岡県サイズの氷山が分離か


  3年連続で観測史上最高を記録した世界平均気温の影響もあって、北極と南極の海氷面積は過去最小ペースで推移しています。特に南極の海氷は過去数年間、観測史上最大面積を記録していたため、今夏(南極は今が夏)の海氷面積の極端な融解には専門家も首をかしげています。

  しかし、とけている南極の氷は、海氷だけではありません。


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Credit: NASA

  米航空宇宙局(NASA)が215日に公開した観測結果によると、以前から融解による後退を続けている西南極のパインアイランド氷河で米ニューヨークのマンハッタン島サイズの氷が1月末に崩壊しました。


  下のGIFアニメーションの中央に、パインアイランド氷河から分離する氷の塊を確認できます。


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  そして、数か月以内に崩壊する可能性が高いと予想されているラーセンC棚氷に生じている亀裂が時間の経過と共にさらに伸び、現在は全長が160kmを超え、亀裂の幅は約450メートルになっています。もしも崩壊すれば最大で約5000平方キロメートルの氷山が棚氷から分離することになります。この面積は、福岡県とほぼ同じサイズです。


  そのラーセンC棚氷の亀裂の様子を、英国南極研究所が221日に公開しました。



  ひとつだけいいニュースがあるとすれば、この棚氷はすでに海上に浮かんでいる状態なので、崩壊しても海面上昇につながらないことくらいです。


  しかし、長期的に見れば、棚氷が崩壊して後退することで、その後方に位置する南極大陸上の氷床が前進して陸地からせり出し、気温上昇による上からの融解と、温度の高い海水による下からの融解が海面上昇のペースを加速させるため、今世紀末までに1メートル以上の海面上昇が起こる可能性が指摘されています。


  このようなメカニズムによって融解が進んでいるのは西南極だけではなく、東南極でも起こっているLenaerts et al. 2016)と考えられておりRintoul et al. 2016)、数百年かけて3メートル以上の海面上昇に繋がると指摘されています。


  つまり、今わたしたちが目撃しているのは、今後数百年から千年単位先の未来に加速度的に起こるであろう現象の最初の一部に過ぎないのです。


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【参照文献】

Lenaerts, J. T. M., Lhermitte, S., Drews, R., Ligtenberg, S. R. M., Berger, S., Helm, V., … Pattyn, F. (2016). Meltwater produced by wind–albedo interaction stored in an East Antarctic ice shelf. Nature Climate Change, 7(1), 58–62. http://doi.org/10.1038/nclimate3180

Rintoul, S. R., Silvano, A., Pena-Molino, B., van Wijk, E., Rosenberg, M., Greenbaum, J. S., & Blankenship, D. D. (2016). Ocean heat drives rapid basal melt of the Totten Ice Shelf. Science Advances, 2(12), e1601610–e1601610. http://doi.org/10.1126/sciadv.1601610


【参考記事】

Scientists Got a New Look at the Growing Larsen C Crack|Climate Central

A Manhattan-sized iceberg just broke off Antarctica's Pine Island Glacier|Mashable


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