2015年から2016年にかけて発生し、世界各地に影響を与えた観測史上最強レベルのエルニーニョ現象が終息したのは昨年の初夏。その後、勢力が強くなると思われたラニーニャ現象はなかなか発生せず、やっと発生したら強くなることなく終息を迎えてしまいました。
ところが、2月中旬の米海洋大気局(NOAA)気象予報センターとコロンビア大学による発表では、今年の秋にエルニーニョ再発生の可能性があると予想しています。
Credit: CPC/IRI
上のグラフは、エルニーニョ・南方振動(ENSO)が、エルニーニョ、ラニーニャ、ニュートラルのどの状態になるかを予想したものです。これを見ると、8月から10月までに51%の確率でエルニーニョ現象が発生すると予想されています。
世界主要気象機関のエルニーニョ・南方振動(ENSO)モデルによる2017年2月発表のニーニョ3.4海域における海表面温度偏差の長期予想(基準年は1981年から2010年)。Credit: CPC/IRI
このグラフは、世界の主要気象機関のコンピュータモデルによる、3か月毎のニーニョ3.4海域の海表面温度を予想したものです。NASAやNOAA、英気象庁、日本の気象庁も含まれています。この予想によると、大半のコンピュータモデルが、初夏から秋にかけてニーニョ3.4海域の海表面温度がエルニーニョ状態(偏差が+0.5℃以上)になると予想しています。日本の気象庁(JMA)だけ他のモデルとは異なる予想をしているのがわかります。
エルニーニョ現象は、だいたい2年から6年に一度発生しています。ここまでを見ると、「世界各地に深刻な干ばつなどの異常気象をもたらしたあのエルニーニョがまた帰ってくるのか?」と思うかもしれませんが、NOAAによると、2月の時点で夏以降のエルニーニョの状態を予測するのは大変困難だそうです。エルニーニョやラニーニャがニュートラルな状態から勢力を強めていく段階に入れば、長期的な予想を立てやすくなりますが、春は現在のようにラニーニャ現象が終息した直後の移行期にあたることが多く、この時期に予想するのは不確かな要素が多いために困難を極めるようです。春が終われば、もう少し精度の高い予想ができるとNOAAは述べています。
また、専門家の中には、2015年から2016年のような強いエルニーニョではなく、エルニーニョによく似た現象で、赤道太平洋中部(ニーニョ3.4海域)の海表面温度だけが上昇し、赤道太平洋東岸の気温は上昇しない「エルニーニョもどき」が発生する可能性があると指摘しています。
エルニーニョとエルニーニョもどきの違いは、以下の図で、赤道太平洋東岸の海表面温度偏差を比較すればわかりやすいと思います。
(上)エルニーニョ現象が発生した1997年11月の海面水温平年偏差分布図。(下)エルニーニョもどきが発生したとされる2004年8月の海面水温偏差分布図。Credit: 気象庁
ただでも不確かな要素が多いことに加え、気候変動とエルニーニョの相関関係もわかっておらず、おまけに観測をはじめた頃と現在ではバックグラウンドの大気と海洋の状態が変化しているため、予想はさらに困難になっているのではないでしょうか。夏以降の長期予報に注目です。
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【参考記事】
February 2017 ENSO update: bye-bye, La Niña!|NOAA
What Experts Think Of Speculation That El Niño Will Return In 2017|Forbes
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