米海洋大気局(NOAA)とコロンビア大学による2月の発表で今秋以降の発生確率が50%を超えたエルニーニョですが、3月中旬の発表では発生確率が70%近くまで上昇しました。
Credit: CPC/IRI
上のグラフは、3月の段階で、エルニーニョ・南方振動(ENSO)が今後「エルニーニョ」、「ラニーニャ」、「ニュートラル」のどの状態になるのかをコンピュータモデルで予想した結果です。それによると、6月から10月までのエルニーニョ発生確率が66%から68%と、2月中旬と比較してかなり高くなってきています。
世界主要気象機関のエルニーニョ・南方振動(ENSO)モデルによる2017年3月発表のニーニョ3.4海域における海表面温度偏差の長期予想(基準年は1981年から2010年)。Credit: CPC/IRI
上のグラフは、様々な国のENSOモデルによって今後のENSOの動向をシミュレートした結果です。動的モデル(黄色の太線)の予想では秋以降にニーニョ3.4海域の海表面温度偏差が1℃を超えているのに対し、統計モデル(薄緑の太線)の方は0.5℃を少し上回る程度になっています。NOAA気象予報センター(ピンクの太線)は、ニュートラルの状態が継続すると予想しています。
ラニーニャ現象が勢力を強めることなく終息し、現在はニュートラルの状態(ニーニョ3.4海域の海水面温度の偏差が±0.5℃未満)に戻ったばかりで今後の予想が難しいことに加え、NOAAは今月の公式ブログ記事の中で、各ENSOモデルによる予想結果の幅が大きいため、まだ自信を持てないと指摘しています。
また、太平洋の海水温が全体的に高くなっていることがエルニーニョにどのような影響を与えるのか不明であり、さらに3年連続で冬にエルニーニョ、ラニーニャ、エルニーニョというサイクルが起こるのは、短いENSOの観測史の中で1963年から1966年の一度しか例がないため、正確に予想するのは不可能と述べています。
豪気象局はエルニーニョ発生確率が50%を超えたことを受け、エルニーニョ監視レベルを「inactive」から「watch」へと引き上げましたが(監視レベルはinactive→watch→alertの3段階)、NOAAはエルニーニョの発生状況を判断する基準が違うため、他の要素を満たすまではまだ監視レベルを引き上げずに様子を見ると結論づけています。
ひとつ気になるのは、以前に触れたことがある太平洋十年規模振動(PDO)が、エルニーニョの今後の状況に影響を与えるのではないかという見解があることですが、その話題は別記事で触れる予定です。
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