気象庁が発表した世界平均気温の速報値によると、2017年5月は2015年と2016年に次いで、同月として観測史上3番目の暖かさでした。
世界の5月平均気温偏差。細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均、直線(赤):長期的な変化傾向。基準値は1981〜2010年の30年平均値。単位は℃。Credit: 気象庁
2017年5月の世界平均気温の偏差(基準年は1981年から2010年)は+0.36℃で、2015年の+0.38℃と昨年の+0.37℃に次いで観測史上3番目の暑さでした。20世紀の平均気温との偏差も観測史上3番目の大きさとなる+0.73℃でした。また、5月の世界平均気温は100年あたりで0.71℃上昇しています。
1981年から2010年までの世界平均気温との偏差。破線はエルニーニョ現象が起こった翌年(1997年から98年、2009年から10年、そして今回の2015年から16年)。各月の値は、それぞれの月までの平均値(例えば、2月は1月と2月の偏差の平均。6月は1月から6月までの偏差の平均)。Credit: 気象庁
上のグラフは、1981年から2010年までの世界平均気温と、過去に最も暑かった8年と今年の平均気温との偏差を表したものです。破線はエルニーニョ現象が始まった翌年で、気温がエルニーニョの影響を最も受けた年にあたります。
5月までの段階で、昨年と一昨年に次いで観測史上3番目に暑い5か月間になっています。これまで昨年を上回るか、僅差で昨年を下回っていた今年の平均気温が、ようやく落ち着きはじめたようです。日本の気象庁と米海洋大気局(NOAA)の予想では、晩夏から秋にかけてエルニーニョ現象が発生する確率が低くなってきているため、今年後半に気温が急上昇する可能性は現段階では低く、英気象庁と米航空宇宙局(NASA)が予想したように、観測史上3番目の暑さを記録することになりそうな気配です。
このグラフで注目すべきなのは、観測史上最強といわれたエルニーニョ現象の影響を受けた1998年よりも、エルニーニョとは無縁の今年の方が暑いという事実と、1998年と同じくエルニーニョ現象発生2年目にあたる昨年の気温の方が、1998年よりも著しく高かったことです。これらは、バックグラウンドで温暖化が進んでいることを表しています。
ついでに日本の平均気温も見ておきましょう。
世界の5月平均気温偏差。細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均、直線(赤):長期的な変化傾向。基準値は1981〜2010年の30年平均値。Source: 気象庁
これは、2017年5月の日本における平均気温偏差(基準年は1981年から2010年)を表したグラフです。日本の5月の平均気温偏差は+1.31℃で、1898年の観測開始以降、2015年(+1.80℃)、2016年(+1.76℃)、1998年(+1.64℃)に次いで4番目に暑い5月となりました。なお、20世紀の平均気温との偏差は+1.99℃で、100年あたりで約1.58℃気温が上昇しています。
「地球温暖化」は、その名の通り世界全体の平均気温が上昇していることを意味します。局地的に見ると、北極圏のように地球全体の約2倍の速さで温暖化が進んでいる地域もあれば、緩やかな上昇傾向を見せる地域もあります。日本に注目すると、5月の平均気温偏差は世界(+0.36℃)よりも0.95℃も大きく、100年あたりの気温上昇も世界の約2.2倍の速さで進んでいます。
2016年の年平均気温を比較すると、世界が100年あたりで0.72℃上昇しているのに対し、日本は1.19℃の割合で上昇しており、やはり世界よりも温暖化が約1.6倍速く進んでいることがわかります。
気温が上昇すると、熱波や大雨、洪水などの極端な気象現象の増加と激化が予想されるため、日本は気候変動に対する適応策を急ぐ必要があるでしょう。
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