スタンディングロック・スー族をはじめとする米先住民に対する環境正義問題へと発展し、1年以上にわたって抗議活動が続けられてきたダコタ・アクセス・パイプライン建設問題は、先週、ワシントンD.C.米連邦裁判所のジェームズ・ボアズバーグ判事がトランプ大統領の命令に基づいた米陸軍工兵隊の建設認可が違法であるという判断を下し、米陸軍工兵隊に対して環境への影響を再分析するよう命じました。
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連邦地裁は現地時間6月21日、先住民グループとトランプ政権、そして建設事業者であるエナジー・トランスファー・パートナーズ社(以後「ETP社」)によるステータス・カンファレンス(裁判前に行う状況確認のミーティング)が行われ、今後の裁判の流れが言い渡されました。
ジェームズ・ボアズバーグ判事は、7月と8月に三者の主張を聞くための公聴会の開催を決めました。公聴会を経て、早ければ今秋にも判事が最終判断を下す可能性もありますが、前回の判断で再分析を命じられた先住民居留区への影響評価のスケジュールについて判事に尋ねられた米陸軍工兵隊の弁護士は、まだ着手した段階であることを理由に言及を避け、次回の公聴会までにスケジュールを明確にすると述べるにとどまりました。
また、係争中もパイプラインによる原油輸送は継続されることとなりました。ETP社がその判断を歓迎する一方、先住民グループ側は、国家環境政策法に反することを理由に再分析を行っている間は事業を一時停止するのが通例であることや、試験運転段階よりパイプラインからの原油漏出が続いていることあり、その判断を不服としています。
先住民グループは、米陸軍工兵隊がどこまで詳細に先住民居留区と彼らの生活に対するパイプラインの影響を再分析するのかが不透明であることを懸念しています。判事は再分析を命じましたが、国家環境政策法に基づくEIS(環境影響評価報告書)の作成までは求めていないため、米陸軍工兵隊が前回の評価を一部修正するだけで、短期間で同じ結論に至る可能性があります。
さらに、国家環境政策法は、事業の影響を受ける者(今回のケースでは先住民グループ)に対する通達や情報提供を欠いたままで政府が認可の判断を下すことを禁じていますが、先住民居留区の環境に悪影響があるとわかった場合でも、政府による認可を妨げる法的拘束力は持っていません。
つまり、再分析の結果、パイプラインが先住民居留区や彼らの生活にリスクを与えることが判明した場合でも、米陸軍工兵隊はそのリスクを先住民に負わせてパイプラインの運転を継続させるという判断を下すことができるのです。
先住民側は、先週のボアズバーグ判事による判断が、EIS作成の根拠になり得るとし、もしも先住民の意見を取り入れることなく短期間で再分析が終了し、パイプライン認可が覆らなかった場合には、さらに法廷闘争を続けると述べています。
先住民側は、自分たちにとって向かい風であることを十分に理解したうえで、それでも水を守るために、先住民の自治権と基本的人権のために、そして未来の世代のために、今後も連邦政府とたたかい続けることになるでしょう。
スタンディングロック・スー族のデーブ・アーチャンボルト2世チェアマンは、先週のボアズバーグ判事による判断を前に、アトランティック紙にこのように語っています。
「このたたかいをはじめたときに、わたしたちは過去の歴史、事実、そして法について理解していました。それでもわたしたちは声をあげなければならないのです。なぜなら、たとえパイプライン建設が法的に正しいとしても、道徳と倫理に反しているからです。スタンディングロック(居留区)で起こったのは、社会的なムーブメントです。ずいぶん時間が経ってからしか、その恩恵に授かることはできないでしょう。わたしが生きている間に恩恵はないかもしれません。」
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【参考記事】
DAPL Ruling: What Was Decided, What’s Next?|Earthjustice
Oil Is Flowing Through the Dakota Access Pipeline|The Atlantic
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