グレイシャー(氷河)国立公園から氷河が消える日



  緯度の高い地域や、高い山岳地帯などで形成される氷河は、北極圏や南極圏の海氷や氷床、棚氷などと同様に、地球温暖化の進行状況を判断する目安になっていますが、近年は世界中で氷河の融解が進んでおり、中には温暖化によって消滅が懸念される氷河もあります。

  米モンタナ州の「グレイシャー国立公園」もその例外ではなく、直近50年で国立公園内に点在する氷河の多くが急激に縮小しており、このままでは今後数十年ですべての氷河がとけてなくなってしまうという調査結果を、米国地質調査所(USGS)とポートランド州立大学が発表しました。

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1966年から2015年における氷河のサイズの変化。Source: ニューヨーク・タイムズ 

 調査チームは、1966年以降に空中撮影された写真と衛星写真を用いてグレイシャー国立公園とロッキー山脈国立公園に点在する合計39個(うちグレイシャー国立公園の氷河は37個)の氷河のサイズを比較し、どれくらい縮小しているかを調べました。その結果、全体では平均で39%の縮小がみられましたが、最大で85%縮小した氷河も確認されました。USGSは「氷河」と呼ぶ基準を「表面積が25エーカー以上」と定めていますが、19世紀後半にグレイシャー国立公園に150個存在した25エーカー以上の氷河は、26個まで減少していると述べています。

  研究チームは、他の地域と比較して約2倍の速度で進む気温上昇と、それによる降水パターンの変化が、同州内及びロッキー山脈の氷河を浸食し融解させる原因だとみています。

  冬の気温が十分に低くならないと、氷河を形成する元となる雪ではなく雨が多くなります。また、本来ならば冬に積もった雪がとけるだけで終わるはずの春と夏の気温が上昇すると、既存の氷河がとけてしまいます。調査によると、1960年代と比較して春に雪がとけ始める時期が2週間早まっており、それも氷河の急激な融解につながっているようです。

  この地域には、約7,000年にわたって氷河が形成されてきました。現在の平均気温はその7,000年の時の中で最も高くなっており、1910年以降から目立ちはじめた氷河の融解は、1970年代以降に急激に加速しました。

  調査チームを率いたUSGSのフェイガー博士は、今後数十年ですべての氷河がとけてなくなるのは避けられないと述べています。

  氷河がなくなると、その環境に依存していた生態系もバランスを崩すため、一部の種は存続が危ぶまれています。人為的気候変動の影響は、人間を超えて自然やそこに存在するありとあらゆる生物種に及びます。

  また、これはロッキー山脈の氷河だけに起こっていることではありません。ほんの一部を除く世界中の氷河が温暖化によって縮小傾向にあります。

  1年間に300万人近い観光客が、氷河を見るためにグレイシャー国立公園を訪れますが、氷河が消滅の危機にあることから、「今のうちに訪れておくべき観光地」として頻繁に話題にのぼっています。

  国立公園の名前になっている「グレイシャー」は、そのまま「氷河」を意味しています。それほど遠くない未来に、子どもや孫と一緒にグレイシャー国立公園を訪れた親や祖父母が、「ここには氷河がたくさんあったんだよ」と語りかける姿が見られるようになるかもしれません。

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