2015年に当時のオバマ政権を相手に未成年者21人が気候変動の世代間における公正を求めて起こした訴訟は、2016年の連邦裁判所による予想を覆す判断で本格審査に進むことが決まりました。その後、トランプ政権に移行したために法廷闘争の相手もオバマ大統領からトランプ大統領に変わり、行方が注目されていましたが、オレゴン地方裁判所のトーマス・コフィン判事は、2018年2月5日よりオレゴン州ユージーンの米連邦地方裁判所において審理を開始するよう命じました。
Credit: Zahra Hirji/InsideClimate News
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9歳から21歳までの原告21人は、米連邦政府が約50長年にわたり気候変動の影響の深刻さを知りながら化石燃料の普及を援助し、管轄下にある大気や海を含む天然資源を保護する義務を怠って温室効果ガス排出を続けてきたのは、現在と未来の世代が平等に生命と自由、財産を守る権利を侵害しており違憲であると主張しています。
連邦政府は、そのような義務を憲法は謳っていないとし、原告の訴えを棄却するよう求めてきましたが、地裁はトランプ政権の訴えを棄却しています。
また、この裁判の行方が直接企業利益につながる化石燃料産業のロビイストも連邦政府側に加わって争ってきました。しかし、トランプ政権移行後に方針を転換し、訴訟からの撤退を認めるよう地裁に求めていましたが、コフィン判事はこれを認め、裁判は未成年者ら21人とトランプ政権の間で行われることになりました。
現在は、トランプ政権が本格的な裁判に持ち込ませないための最後の手段として、オレゴン連邦地裁による連邦政府の訴え棄却の決定を見直すよう控訴裁判所に求めていますが、この訴えが認められるのは極めて稀であるため、来年2月から原告と連邦政府の双方がお互いの主張を訴える本格審理に入る可能性が濃厚とみられています。
原告側の争点は主に3つで、ひとつめは人間活動が気候に影響を与えてきた科学的事実を、専門家である気候科学者を証人に招き立証するとしています。
2点目は、連邦政府がいつ気候変動の深刻さを知り、その情報を用いてどのように対策を行って(怠って)きたのか、そしてそれがトランプ政権に移行後どのように悪化したのかを、過去の政府文書を用いて証明すると原告は述べています。この点に関し、原告弁護団はトランプ政権による証拠隠滅を防ぐために、司法省に対して気候変動、エネルギー、二酸化炭素排出に関する文書の保存を求めました。トランプ政権はその求めを却下するよう要求しましたが、連邦地裁によって棄却されています。
そして3つめは、安全な二酸化炭素濃度や何度までの気温上昇ならば未来の世代の生命と自由、財産を守る権利を保証できるのか、そしてそのためにどのような対策が必要かという点です。どこまでが合憲でどこからが違憲かを証明するのは難しいのではないかと専門家はみています。
このような訴えが起こされた前例がないため、原告にとっては不利なたたかいになりそうですが、前例を作ることで、市民の訴えが今後の気候変動対策を含む環境政策に影響を与える流れを作るきっかけになるかもしれません。
【参照記事】
Trial Date Set for Children’s Climate Lawsuit Against U.S. Government|InsideClimate News
A landmark climate lawsuit against Trump is scheduled for trial next year. Here’s what to expect|The Washington Post
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