昨年9月に、1751年から2010年までの温室効果ガス排出量の63%を90社が占めているという研究結果が発表(『90社が温室効果ガスの約3分の2を排出しているという研究結果』を参照してください)され、国家単位で排出量を算出する従来の方法とはまた違う角度から気候変動の原因となる活動に対する責任の問い方の指針が示されました。
今回、機関投資家が連携して気候変動に対する戦略や温室効果ガスの排出量の公表を企業に求める「CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)」が、農業と土地利用による排出を除く温室効果ガス排出量を分析したところ、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が設立された1988年以降、温室効果ガスの71%が100社によって排出されていたことがわかりました。
温室効果ガス排出量が最も多い50社(公営含む)による化石燃料別排出量の内訳。単位: GtCO2e(二酸化炭素排出量相当)。Source: CDP
CDPの報告書「カーボン・メジャー」の分析によると、人間活動が気候変動の原因になっていることを懸念してIPCCが設立された1988年以降における温室効果ガス排出量の71%が、100社によるものでした。また、わずか25の私有及び国営企業が同期間における排出量の50%以上を占めていました。これら100社が1988年以降に排出した温室効果ガスの量は、それ以前の237年間で排出された量を超え、その237年間を含めた場合の100社による温室効果ガス排出量は全体の52%に相当します。
1988年から2015年において温室効果ガス排出量が最も多かった10社。中国国営石炭、サウジ・アラムコ、ガスプロム(ロシア)、イラン国営石油会社、エクソンモービル社、コール・インディア(インド国営)、ペメックス(メキシコ国営)、ロシア国営石炭、ロイヤル・ダッチ・シェル、中国石油天然気集団の順。Source: CDP
上の表は、1988年から2015年までの排出量が最も多かった国営と民間企業10社の排出量と全体における割合を表しています。これら10社だけで、同期間における総排出量の約36%を占めています。
また、報告書は1988年以降における温室効果ガス排出量の59%をサウジアラビアやロシア、イラン、中国などの国営企業が占め、32%が公開企業や投資家所有企業に起因し、2%が非公開企業によるものと分析しています。
国営企業による59%の排出量を削減するためには、気候変動枠組み条約締約国会議などの国際的な交渉を通じて圧力をかける必要があります。
化石燃料産業は、「パリ協定」に賛同し、トランプ大統領による同協定からの離脱に反対する意思や、炭素税導入に協力する姿勢を見せる一方で、ロビー組織などを通じて気候変動枠組み条約締約国会議などに積極的に参加し、化石燃料産業に有利な(気候変動対策を遅らせるための)ルール作りに影響を与えようとするなど、世界的な化石燃料脱却の流れを利益優先でコントロールしようとしており、積極的に温室効果ガス排出量を削減する意思があるのかどうかが懸念されています。
株式会社や投資者所有企業による32%の温室効果ガス排出量について、報告書は株主などの投資家が約20%の排出量に影響力を与えることができる分析しており、エクソンモービル社の株主が同社に対して気候変動への影響をまとめた年次報告書の作成を義務づける案を採択したように、投資家が化石燃料企業のポリシー見直しなどを求めることで温室効果ガス排出量の削減につなげていく必要があるでしょう。
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