米航空宇宙局(NASA)の発表によると、2018年3月の世界平均気温は、同月として観測史上6番目に高い値でした。
1880年から2017年までの3月の世界平均気温偏差。黒い線は各年における3月の平均気温。赤い線は5年ごとの移動平均。(基準年は1951年から1980年。単位は℃)。Credit: NASA GISS
3月の世界平均気温偏差(基準年は1951年から1980年)は+0.89℃と、観測史上最高だった2016年の+1.30℃、2番目に暑かった2017年の+1.12℃よりもかなり低く、2010年(+0.92℃)、2002年(+0.91℃)、2015年(+0.90℃)に次いで観測史上6番目に暖かい3月になりました。
パリ協定の目標が、2100年までの気温上昇を産業革命前比で+2.0℃、努力目標を+1.5℃と定めているので、現在までにどれくらい気温が上昇しているのかをイメージしやすいように、今後、NASAの世界平均気温では基準年を産業革命に最も近い30年(1881年から1910年)に変更したグラフも作成することとします。
1880年から2017年までの3月の世界平均気温偏差。黒い線は各年における3月の平均気温。赤い線は太陽周期や自然変動の影響を少なくするために11年ごとの移動平均に変更(NASAが設定している1951年から1980年の基準年を、産業革命前に最も近い30年にあたる1881年から1910年に変更。単位は℃)。NASAのGISSデータから作成。
基準年を19世紀後半から20世紀初めに変更すると、2016年3月にはすでにパリ協定が努力目標としている+1.5℃を一時的に上回っていた(+1.56℃)ことがわかります。今年3月の偏差は+1.11℃でした。
二酸化炭素濃度が今世紀中に二度と400ppmを下回らないであろうことと同じように、今後数十年のうちに、すべての月で+1.5℃を上回る可能性はかなり高いでしょう。
2018年3月の世界平均気温偏差を表した世界地図(偏差の基準は1951年から1980年。単位: ℃)Credit: NASA
3月は、冬から初春にかけて北半球でよく見られた極渦の南下による強い寒気の影響を受けたヨーロッパと米東部では平年よりも気温が低くなりましたが、それ以外の地域ではほぼ平年を上回りました。特に中東から東アジアにかけてと米アラスカ州、そしてカナダ東部では気温が平年を大きく上回りました。
1881年から1910年までの世界平均気温との偏差。各月の値は、それぞれの月までの平均値(例えば、2月は1月と2月の偏差の平均。6月は1月から6月までの偏差の平均。)。NASAのGISSデータより作成。
1月から3月までの3か月間の平均気温は、観測史上最高を記録した2016年(+1.56℃)、同2番目だった2017年(+1.36℃)、そして同3番目の2015年(+1.16℃)を下回り、同期間としては4番目の暑さになりました。
産業革命に最も近い世界平均気温を基準にして変化の傾向を見ると、今後も年によって高くなったり低くなったりを繰り返しながら、長期的には2000年代よりも2010年代、そして2010年代よりも2020年代の平均気温の方が高くなるのは間違いないでしょう(ただでも低下している太陽活動がマウンダー極小期よりもはるかに低くなったり、長期にわたって火山の噴火でも起これば気温の上昇速度が少し遅くなりますが、寒冷化させるほどの影響は期待できません)。
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都雄次