気象庁と米航空宇宙局(NASA)に続き、米海洋大気局(NOAA)も3月の世界平均気温のレポートを公表しました。3月の世界は、同月として過去5番目の暖かさとなりました。また、今年に入ってから最初の3か月は、観測史上6番目の暖かさでした。
2018年3月の世界平均気温偏差。基準年は1901年から2000年。単位は左側が摂氏、右側が華氏。Source: NOAA
3月の陸地と海洋を合わせた世界平均気温は、20世紀の平均を0.83℃上回る12.7℃と、同月としては139年間の観測史上5番目の暑さになりました。
これで、3月としては42年連続、そしてすべての月を合わせて399か月連続(4月に400か月連続達成ほぼ間違いなし)で20世紀の世界平均気温を上回っています。また、3月の世界平均気温は、1世紀あたりで0.76℃上昇しています。
気象庁とNASAと同様、パリ協定の目標である産業革命前比+2℃と+1.5℃にどれくらい近づいているかを、NOAAのデータで産業革命に最も近い30年間(1881年から1910年)を基準としたグラフを作成して確認します。
2018年3月の世界平均気温偏差。黒線は各年における3月の平均気温。赤線は11年ごとの移動平均(太陽周期や自然変動の影響を少なくするために11年に設定)。基準年を1881年~1910年に変更。単位は℃。Source: NOAA
2016年にパリ協定の努力目標である1.5℃に迫る+1.47℃(過去最高)を記録しましたが、昨年は+1.26℃(同2番目)、今年は+1.07℃で、同じ基準年を用いたNASAの+1.11℃よりも少し低い値になっています。
2018年3月の世界各地における平均気温偏差を表した地図(基準は1981年から2010年。単位は℃)。Source: NOAA
地域によって平年との温度差にばらつきが見られます。アラスカ州、カナダ北部と東部、南米、アフリカ、オーストラリア、そしてアジアの大部分では平均気温が平年を上回りました。特に、アフリカ東部の一部地域と中東、南アジアでは平年を3℃以上も上回る記録的な暖かさでした。逆に、アメリカの広範囲とカナダ南西部、ヨーロッパ、そしてロシアの西部と北部における3月の平均気温は平年を下回りました。
2018年を含む、それ以前の観測史上最も暖かかった9年における各月までの世界平均気温偏差(基準は20世紀)。各月の値は、それぞれの月までの平均値(例えば、2月は1月と2月の偏差の平均。6月は1月から6月までの偏差の平均)。Source: NOAA
年初から3か月間の世界平均気温偏差は+0.74℃で、同期間としては過去6番目の暖かさでした。2018年を上回ったのは、過去最高から順番に、2016年、2017年、2015年、2002年、2010年の5年です。2002年は後半に気温が下がり、年平均気温が観測史上15番目に高い値だったため、このグラフには含まれていません。
次に、基準年を1881年から1910年に変更したグラフも確認しておきます。
2018年とそれ以前の年平均気温が観測史上最も暖かかった5年における各月までの世界平均気温偏差(基準は1881年から1910年)。各月の値は、それぞれの月までの平均値(例えば、2月は1月と2月の偏差の平均。6月は1月から6月までの偏差の平均)。Source: NOAA
基準年を19世紀後半から20世紀初頭に設定した場合、年初から3か月間の平均気温偏差は+0.995℃で、ほぼ+1.0℃となっています。つまり、パリ協定の努力目標である+1.5℃の壁まであと0.5℃の余裕しかありません。1991年以降、3月は10年あたりで0.2℃気温が上昇しているので、現在のペースだとあと約25年、2040年代初めには+1.5℃を超える計算になります。それ以降も同じペースで気温上昇が続くと仮定した場合、そこからさらに25年後、2060年代半後半には2℃の壁を超えそうです。
もちろん、温室効果ガス排出量を急激に削減してゼロ・エミッションを達成し、さらに大気中の二酸化炭素を回収してどこかに貯留するテクノロジーを実用化できれば、2℃と1.5℃の目標の達成も可能かもしれません。
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