ハワイ州マウナロアにあるスクリップス海洋研究所によると、4月の月平均二酸化炭素濃度が、1958年の観測開始以来初めて410ppmを超え、410.26ppmに達しました。
ハワイ州マウナロア観測所における2014年以降の月平均CO2濃度。単位はppm(百万分率)。ソース: 世界温室効果ガス・リファレンス・ネットワーク(Global Greenhouse Gas Reference Network)
重要なポイント
・ マウナロアでCO2濃度の観測が始まったのは、今から60年前の1958年。その年の4月は月平均CO2濃度が317.45ppmでした。観測開始以降、CO2濃度は約29%上昇しています。また、産業革命前(280ppm)と比較すると、約47%もCO2濃度が上昇したことになります。
・ 産業革命以前の過去80万年で、CO2濃度が300ppmを超えたことはありません。化石燃料を使用するようになってから、CO2濃度が急激に上昇しています。
マウナロアの観測データ(1958年以降)と氷床データ(1958年以前)による、過去80万年のCO2濃度(単位はppm)。最新データは2018年5月12日のもの。ソース: スクリップス海洋研究所
・ 観測開始以降、CO2濃度の上昇ペースが加速傾向にあります。2011年以降は年平均2.38ppm、直近10年(2008年~2017年)は年平均2.26ppmのペースでCO2濃度が上昇しています。1961年から1970年までと比較すると、現在はCO2濃度の上昇ペースが約2.6倍に加速しています。
マウナロア観測所におけるCO2濃度の上昇ペース(単位はppm)。グラフ中の黒い水平線は、10年間の平均CO2濃度上昇ペース(1960年~1969年、1970年~1979年…)。ソース: 世界温室効果ガス・リファレンス・ネットワーク(Global Greenhouse Gas Reference Network)
・ 現在のCO2濃度上昇ペースが続くと、2030年代半ばには450ppmを、2050年代半ばには500ppmを超えてしまいます。そして、今世紀末には600ppmに到達することになります。現在、こうして大きく取り上げられているCO2濃度がたいしたことなかったと感じる未来は、もうそんなに遠くないのです。
過去の記録から未来を覗いてみると?
・ 過去80万年で300ppmを超えたことはないと書きましたが、現在のCO2濃度と同じレベルの時代はありました。今から300万年以上前の鮮新世中頃は、CO2濃度がおよそ400ppmで、産業革命前と比較して気温が2℃から3℃高く、海抜は最低でも6メートル高かったとされています(過去記事『摂氏2度の気温上昇で海面はどれくらい上昇するのか?』を参照してください)。
現在から80万年前までのCO2濃度、現在との海抜の比較、産業革命前比の気温。ソース: Dutton et al. 2015
・ さらにさかのぼって、CO2濃度が現在とほぼ同じ400ppmから今世紀半ばに達するであろう500ppmだった、1400万年から2300万年前の中新世には、気温が4℃上昇して南極大陸の氷床が急激に融解し、海面が40メートル上昇したといわれています。
現在からおよそ4000万年前までのCO2濃度、酸素の安定同位体比δ18Oレベル(高ければ気温が高い)、南極の氷床(グラフ上部。青が濃ければ氷床が厚い)、北半球の氷河(色が濃ければ多い)。ソース: Skeptic Science
・ さらにさらにさかのぼって約3400万年前、始新世から漸新世へと移行する時期のCO2濃度は750ppmでしたが、南極大陸には氷が存在していなかったという研究結果があります。
・ CO2濃度が、気温も海抜も高かった過去と同じレベルだからといって、今すぐに気温が一気に上昇したり、海面が40メートル上昇したりすることはありませんが、このままだと数百年から数千年かけて海抜が当時と同じレベルに達する可能性があります。
現在の状況から見える未来
・ パリ協定で定めた自主的な目標をすべての国が達成しても、今世紀末の気温は産業革命比で3℃以上上昇するといわれています。このままのペースで上昇すれば、今世紀末のCO2レベルは600ppm。過去と照らし合わせると、未来は…。
・ 現在のCO2上昇ペースが速すぎて、気温と海面がどれくらいの速度で変化するのか、それに伴ってどれくらいの規模の極端な気象事象が起こるのか、予想するのは困難です。それが、気候科学者が警鐘を鳴らす大きな理由でもあります。
まとめ
・ 人類史上最高を更新し続けているCO2濃度の上昇ペースがさらに加速。
・ 過去に現在と同じCO2レベルだった時は、気温が現在よりも1℃から2℃高く、海面は6メートル以上高かった。500ppmの時には気温が4℃、海面が40メートル上昇。
・ CO2濃度が高くなるほど、気温も海面も上昇するのは間違いなく、それに伴う極端な気象現象(干ばつや豪雨、洪水、ハリケーン、台風など)も懸念される。
・ CO2濃度の上昇を抑えるために最も効果的な対策は、化石燃料から迅速に撤退し、CO2を排出しないエネルギーを急速に普及させ、大気中のCO2を回収・貯留する技術の開発と実用化を急ぐことです。
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