気象庁の速報値によると、4月の世界は2016年と2017年に次いで、同月として観測史上3番目の暑さになりました。
2018年4月の世界平均気温偏差。細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均、直線(赤):長期的な変化傾向。基準値は1981〜2010年の30年平均値。単位は℃。Credit: 気象庁
2018年4月の世界平均気温偏差(基準年は1981年~2010年)は+0.31℃で、2016年の+0.54℃と2017年の+0.39℃に次いで、同月としては1998年及び2014年と並んで観測史上3番目に高い値でした。20世紀の平均気温との偏差は+0.70℃でした。なお、4月の世界平均気温は100年あたり0.77℃の割合で上昇しています。
産業革命以降の気温上昇がどれくらいなのかをイメージしやすいように、気象庁のデータで産業革命に最も近い30年間(1901年~1930年)を基準年としてグラフを作成してみます。
2018年4月の世界平均気温偏差。黒線は各年の平均気温偏差。赤線は偏差の11年移動平均。基準年は1901から1930年。単位は℃。Credit: 気象庁
基準年を1901年から1930年にすると、4月の平均気温偏差は+0.97℃と、産業革命前と比べて約1℃上昇しています。
2018年4月の世界平均気温偏差分布図。Credit: 気象庁
分布図を見ると、北米が極端に涼しく(アメリカ本土における4月の平均気温は20世紀の平均を下回り、124年の観測史上で13番目の低さでした)なりましたが、その他の陸地はおおむね平年よりも暖かくなり、特にヨーロッパでは平年を大きく上回る地域がありました。ラニーニャ現象は、NOAA(米国海洋大気庁)がニュートラルに戻ったと公式ブログで発表、日本の気象庁は5月中にラニーニャが終息する見込みと発表していますが、4月の時点ではまだラニーニャの影響を受けたため、赤道太平洋中央から南米西岸にかけて海表面温度が低くなっています。
1901年から1930年までの世界平均気温との偏差。破線はエルニーニョ現象が発生した翌年。各月の値は、それぞれの月までの平均値(例えば、2月は1月と2月の偏差の平均。6月は1月から6月までの偏差の平均)。Credit: 気象庁
これは、1901年から1930年までの世界平均気温を基準に、過去に最も暑かった5年と今年の平均気温偏差を表したグラフです。破線はエルニーニョ現象が始まった翌年で、気温がエルニーニョの影響を最も受けた年にあたります。
1月から4か月間の平均気温偏差は0.94℃で、5番目に大きな値になっています。ラニーニャ現象の影響を受けて気温が低くなっている今年と、過去最強規模のエルニーニョ現象の影響を受けた1998年の差がほとんどありません。これは、気候変動によって気温が上昇したことを示しています。
日本の平均気温も確認してみます。グラフの基準年は世界平均気温と同じく1901年から1930年に変更してあります。
2018年4月の日本における平均気温偏差。黒線は各年の平均気温偏差。赤線は偏差の11年移動平均。基準年は1901から1930年。単位は℃。Credit: 気象庁
気象庁の基準年(1981年から2010年)では、4月の平均気温偏差は+1.40℃(20世紀平均では+2.03℃)と、観測史上5番目に高い値でした。また、日本の4月の平均気温は、100年あたりで約1.23℃上昇しています。
基準年を1901年から1930年に変更すると、4月の日本の平均気温偏差は+2.26℃でした。世界と比較して、気温上昇のペースが著しく速くなっています。
1901年から1930年を基準年とした日本における平均気温偏差。最も偏差が大きかった5年と今年を比較。各月の値は、それぞれの月までの平均値(例えば、2月は1月と2月の偏差の平均。6月は1月から6月までの偏差の平均)。Credit: 気象庁
年初からの4か月間は、1月(+0.65℃)と2月(+0.14℃)が涼しかったものの、3月(+2.94℃)と4月(+2.26)が暖かかったため、偏差が+1.49℃まで上昇し、4月の時点では過去5番目に暖かかった2004年との差がかなり小さくなりました。
感覚が麻痺してしまいがちですが、120年を超える観測史上で、過去最高レベルに暑い年が連続した後の5番目の暑さは、まだ極端に気温の高い状態が傾向として続いているということなので、「寒冷化が始まった」などと勘違いをしてはいけません。
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