気候変動の向こう側

  気象庁と米航空宇宙局（NASA）に続いて、米海洋大気局（NOAA）が4月の世界平均気温を発表しました。世界の4月は、同月として観測史上3番目の暖かさとなりました。また、今年に入ってからの4か月間は、観測史上5番目の暖かさでした。3気象機関のデータは、すべて世界が過去3番目に暑い4月を過ごしたことを示しています。

  4月の世界における陸地と海洋を合わせた平均気温は、20世紀を0.83℃上回り、2016年（+1.08℃）と2017年（+0.89℃）に次いで、同月として139年の観測史上で3番目の暑さになりました。

  これで、4月としては42年連続、すべての月を合わせると400か月連続で20世紀の世界平均気温を上回っています。また、4月の世界平均気温は、1世紀あたり0.71℃の割合で上昇しています。

  ついに400か月連続で平年の気温を上回るところまできてしまいました。世界平均気温が平年（20世紀平均）を下回ったのは、1984年の12月が最後。つまり、1985年以降に生まれた人たちは、平年よりも涼しい1か月を一度も経験していないことになります。

  気象庁とNASAと同じように、パリ協定の目標である産業革命前比+2℃と+1.5℃にどれくらい近づいているのか、NOAAのデータで産業革命に最も近い30年間（1881年から1910年）を基準に変更し、グラフを作って確認します。

  2016年の+1.31℃（過去最高）から、昨年は+1.12℃、そして今年は+1.06℃と低くなってきていますが、長期的な傾向としては1981年以降の4月の平均気温は10年あたり0.18℃の割合で上昇しているため、このままのペースだと2040年台初めには、パリ協定の努力目標である1.5℃の壁を超えることになります。しかも、良くないことにこの上昇ペースは1980年以前の30年間と比較して2倍以上加速しています（月平均気温は変動が大きく、年平均気温ほど重きを置く必要は感じませんが）。

  南アメリカ南部、中央ヨーロッパ、ロシア東部、そしてオーストラリアでは、平年よりも3℃以上高い月平均気温を記録した地域がありました。これらの地域の中には、観測史上最も暑い月平均気温を記録したケースも見られました。逆に、カナダとアメリカでは月平均気温が平年を3℃以上下回る地域もありました。アメリカ中西部は記録的な涼しさとなり、ウィスコンシン州とアイオワ州では、観測史上最も寒い4月になりました。アメリカ本土における4月の平均気温は、過去13番目に低い値でした。

  4月に起こった最も顕著な気温関連の事象としては、パキスタンで世界すべての場所を含めて4月としては観測史上最高の日最高気温である50.2℃を記録したことが挙げられます。その地域における4月の月平均気温を10℃上回る、脅威的な暑さでした。

  年初から4か月間の世界平均気温偏差は+0.76℃で、2016年（+1.15℃）、2017年（+0.95℃）、2015年（+0.84℃）、2010年（+0.77℃）に次いで、同期間としては観測史上5番目の暖かさでした。

  次に、基準年を産業革命前に最も近い1881年から1910年に変更したグラフも確認しておきます。

  基準年を19世紀後半から20世紀初めに変更すると、年初から4か月の平均気温偏差は+1.01℃で、パリ協定の努力目標である+1.5℃の壁まで0.5℃を切っています。1981年以降における1月から4月までの4か月間の平均気温は10年あたり0.16℃の割合で上昇しているため、このペースが続けば、2040年台後半には+1.5℃を超える計算になります。なお、1980年以前の30年間と比較すると、この期間の気温上昇ペースは2.7倍速くなっています。

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