気候ポッド 第24回 ~ フェアトレードって本当にフェアなん?|前編


今回&次回のテーマは、チョコレートやコーヒーなどのお高い商品で見かける「フェアトレード」。訳すと「公平・公正な貿易」。言葉どおりに受け止めると、サプライチェーン(商品の「原料調達」に始まり「製造」「在庫管理」「物流」「販売」等を通じて消費者の手元に届くまでの一連の流れ)に搾取や不公正が存在しない商品というイメージです。だって「フェア」って言ってるし。貿易ということは、今のシステムのあり方からするに、開発途上国の労働者からの搾取がないという意味なんだろうなって。

フェアトレードってなんなん?

で、フェアトレードってなんなん?と思って調べてみると、簡単なようでなんだかわかりにくい制度という印象です。

フェアトレード・ジャパンによると、フェアトレードは、「公正な貿易の実現によって、世界から貧困がなくなり、生産者が持続可能な生活を実現し、自ら未来を切り開いていける世界」というビジョンを持ち、「途上国の生産者が貧困に打ち勝ち、自らの力で生活を改善していけるよう、フェアトレード・ラベル運動を通して、 企業・市民・行政の意識を改革し、フェアトレードの理念を広め、より公正な貿易構造を根付かせること」を使命としているそうです。

フェアトレード・ジャパンのYouTubeチャンネルに、わかりやすい動画があります


フェアトレードの対象になっている産品(国際フェアトレード認証対象産品)には、コーヒー、生鮮果物、カカオ、スパイス・ハーブ、蜂蜜、ナッツ、オイルシード・油性果実、加工果物・野菜、サトウキビ糖、茶、野菜、穀類の食品と、繊維、花、スポーツボール、金があり、生産者やトレーダーはフェアトレード基準(生産的・社会的・環境的基準)を守って生産・売買を行わなければ、認証ラベル(最終製品に国際フェアトレード認証ラベル)を貼ることはできません。

個別の産品レベルではなく、すべての産品がフェアとトレード基準を満たす事業主や団体は、World Fair Trade Organization(WFTO)の認証を受けることができます(認証ラベルは別途申請が必要だそう)。

んで、これがいろいろややこしくさせていると思うのだけど、企業が独自の基準で自画自賛フェアトレードだと主張しているケースが少なくないようです。スターバックスカーギルなどがその代表的な例です。正直、オリジナルのフェアトレード認証と比較してフェアなのかどうかさっぱりわかりません(たぶんフェアじゃない)。

で、フェアトレードってホントにフェアなん?

そもそも論をすると、資本主義社会では、企業は利益を追求するので、サプライチェーンの末端から流通ルート、自社組織にいたるまで、完璧にフェアなんてまずあり得ません。サプライチェーンの上流にいる先進国の企業の社員ですら生活賃金(最低賃金でも生活に困らない収入)が確保されているなんてことはまれ(というかあるのか?)でしょうし、そもそも非正規社員がいたらそれだけでひとでなし企業です。自国内ですらそんな状況だったら、サプライチェーンの端っこの人たちや環境にちゃんと配慮するとは思えないですよね。

それはさておき、法的な根拠を伴わない(徹底しようとすれば国際法が必要になりますよね)認証制度には、どうしても限界があります。2014年に行われた調査では、フェアトレード認証を受けている農場で働いている人たちの方が、フェアじゃないはずの大規模農場で働いている人たちよりも生活水準が低かったなんてことも。

それに、基準を決めるのは、サプライチェーンの末端にいる開発途上国の労働者ではありません。超絶アンフェアだった労働環境や生活水準が、かなりアンフェアじゃなくなるといった感じ。

だから全然ダメだと言っているわけではありません。なにもしないよりはよっぽどいいんです。

でも、自分たちと同じ人間(多くの子どもも)が、自分たちが手に取るモノをつくるために、アンフェアな扱いを受けていて、それがフェアトレード認証制度のおかげで改善されたこと、言い換えれば「better than nothing(なにもしないよりはマシ)」を、恵まれている先進国の人間が満足に思っていてはいけないんじゃないでしょうか。

ましてや、これから先は、気候変動の影響を受けて作物の収穫が変動したり、ヘタすると人為的自然災害によって住む場所を追われる労働者が出てくるかもしれない時代に突入します。

民間の機関や企業に頼っていては、気候変動やその他の環境問題でいうところの「私たちひとりひとりにできることがあります」と同じで、不公正の元になっている社会システムを根底から変えることはできません。

ではいったい、どうすれば今よりももっとアンフェアじゃないトレードができるようになるのか。次回のエピソードではそんな話をしていきたいと思います。

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