気候ポッド 第20回 ~ 1.5℃とか2℃とかあと何年とか数字にこだわらなくてもいいという話

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【訂正】冒頭で21回目と言っちゃってますが、フェイクニュースです。本当は20回目です。脳内で変換してください。

今回のエピソードでは、数字の話をしています。1.5℃未満とか、2℃未満とか、あと4年とか。この3低ポッドキャスト(知識も意識も低いけど敷居も低いのだ)ではあんまり扱わないテーマなのですが、最近このあたりのノイズが目立つので話してみました。

パリ協定の目標1.5℃と2℃ってなんなん?

パリ協定では、産業革命前からの気温上昇を壊滅的な影響が出始めるされる2℃未満を目標にしようという流れになっていたのですが、島しょ国やアフリカの開発途上国などが「それでは国が消滅してしまう」と主張し(当然ですよね。南太平洋の海抜が低い島しょ国は本当に沈んじゃうので)、政治的な駆け引きもあって、「2℃を大きく下回り1.5℃を目指す」というところに落ち着きました。

でも、1.5℃目標は、沈みゆく島しょ国や、排出量は極端に少ないのに気候変動の影響を極端に受ける開発途上国のために設定されました。つまり、倫理・公正の視点から考えると、私たち先進国の恵まれた人間が、自分たちのために使っていい数字ではないんです。主張するのなら、グローバルサウスの弱者のためであるべきなんです。なので、そういう環境正義/気候正義的な視点と配慮を欠いた、無責任な1.5℃未満の主張には違和感をおぼえます。

ところで、1.5℃や2℃未満は達成可能なの?

ひと言でいえば、可能です。不可能という科学的事実はいまのところありません。かなり小さい可能性しかありませんが、不可能ではありません。今はない技術の地球規模での開発など、クソ厳しい条件をクリアできれば、達成できます。

あまり誰も話さないのですが、「既定の温暖化」というのがあって、大気中の二酸化炭素濃度が400ppmだった時点ですぐに排出量をゼロにしても(できてませんし、まだまだできそうにありません)、気温は0.66℃上昇するというものです。つまり、2100年までに産業革命前比で1.66℃上昇が保証されてしまっていることになります。

最近の研究結果では、産業革命前比で気温が2.3℃上昇する分の二酸化炭素をすでに排出してしまっているそうです。でも、排出量がゼロになれば、温暖化の速度は落ち、数百年かけて2℃の壁を超えるとのこと。

これらの結果にプラスして、化石燃料の使用をやめると、大気汚染がなくなります。汚染物質は太陽エネルギーが地表に届くのを遮ってくれているので、それがなくなれば気温は上昇します。それが0.2℃から0.5℃くらいといわれています。

ということは、既定の温暖化と大気汚染の解消で、最大2℃以上の気温上昇がすでに保証されていることになります。

1.5℃や2℃の目標値を超えてしまったからといって、私たちに努力をやめるという選択肢はありません。あってはいけないんです。

数字ではなく具体的な行動を求めて

じゃあ、目標をどこに設定すればいいのか?

いつでもどんなときでも「今すぐ二酸化炭素排出量を最速で削減する」です。私たち地球市民は、象徴的な数字ではなく、具体的な行動を企業と国に求めていかなければなりません。

数字の目標にこだわっていると、「数字ウォッシュ」にやられてしまいます。実際の行動を起こすことなく、ガス抜きのためにできもしない、実現させるつもりもない数字を設定されてなんとなく達成感に浸ってしまい、何年もの間なにも起きずにまた慌てて数字を求めることになります。

「いつまでに」とか「どれくらい」とか「あと何年」とか、悪影響が大きいメッセージを発信してはいけないという指摘を気候科学者が何年も続けてきています。


こういう終末論的で脅すようなメッセージは、人の目と耳と心を閉ざさせてしまいます。一般の人に対してこういった間違ったメッセージを発信すると、逆効果になる可能性があります。

Fridays for Futureのグレタ・トゥンベリさんも、いつまでも数字にこだわらずに、今すぐ排出量を削減させなきゃという認識を持つべきだと発信しています。


遅すぎることは絶対にありません。いつでもどんなときでも、行動を起こすべきときは「いま」です。

「絵に描いた餅」はもうおなかいっぱい

パリ協定は絵に描いた餅でした。
「2050年に実質ゼロ」も絵に描いた餅です。

このうえ、「20○○年までに○○%排出量削減」という絵に描いた餅まで増やしてどうするんですか。

そろそろ本物の餅を手に入れるために動くときです。

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