気候ポッド 第33回 ~ 『クローゼットの中の怪物』|Part1: そんなに服いらないっしょ


今回は、ファッションの話です。以前にも、ファストファッションについて話をしたことがあります。まだ聴いていない方は、そっちもぜひチェックしてみてください。

ただファッションと気候変動の話をしてもかぶるだけですよね。このエピソードでは、ファッション産業で環境と気候変動問題の先頭を走るパタゴニアがYouTubeに投下した『クローゼットの中の怪物』について日常会話をしてみました。日本のパタゴニアの日本語字幕版もあるので、とりあえず観て(本当は「ええから見さらせ」と命令したいくらい、深く突き詰めると哲学的・環境正義的な内容です)。


数字や事実関係はこんな感じ。青字は、触れられていない環境正義の部分

衣類の70%はプラスチックでできている。
・ 世界には83億トンのプラスチックが存在。うち63トンがごみ
・ パタゴニアの製品あたりのCO2排出量を減らしても、販売が伸びて企業が成長するほど排出量が増えてしまうジレンマ(工場で石炭火力由来のエネルギーを使っていることは述べているが、大気汚染の話はなし)。
寄付された衣類のうち、再販されるのはわずか6%のみ。一部はすぐに捨てられて、残りはサブサハラ(アフリカ)へ送られ、そこで使い物にならなければ廃棄物処分場に行くか、焼却処分される。結局別の場所でCO2になって排出される。(大気汚染の話はなし。最近は南米にも寄付&リサイクルされた服が送られ、環境汚染が問題になっています)
・ プラスチックはほぼほぼガス・石油由来
・ 消費者が望んでいないプラスチックをガス石油産業が燃料以外で生き残るために推進している。プラスチックは化石燃料の代替
米でプラスチック製造工場が建設ラッシュ。(それらは有色人種や低所得層の多い地域を狙い撃ち
・ ファッション産業は、プラスチックを用いれば低コストで大量生産でき、ガス石油産業は今後も化石燃料で利益を得られる。Win-winの関係なので、積極的にこの関係を解消するはずがない。
プラスチックによる排出量は増加排出量がプラスチックに置き換えられる。(環境正義問題もプラスチックに置き換えられる
・ ついでに言えば、ガス・石油採掘による環境正義問題にも触れていない。フラッキングは大気汚染や騒音、パイプライン漏出事故など、さまざまな環境汚染を起こし、マイノリティがその被害を最も受けている。プラスチックが残る限り、この問題はなくならない。
・ 誰もがパタゴニアを着れば解決するのか?NO。「縫製が良く、良い原料を使い、従業員に公平な賃金を払い、長持ちするものを購入すること」。世界はそうあるべき。いつか消費をやめなければいけない。ただ消費して環境への配慮をせず、それは他の誰かの問題のように振る舞うのは間違っている。

ざっとこんな感じ。他にも動画を観た人が自分が関心を持っていることや自分の生活とつなげて、何かを考えたり感じたり、考えるきっかけになればいいなと思います。

ファストファッションのエピソードで挙げたこともここに貼っておきます。

2014年に消費者が購入した衣類は、2000年比で60%増、なのに、着る期間は半分に減少(たくさん買うのにあまり着ない)。
・ 国連環境計画によると、毎秒トラック1台分の衣類が焼却または埋め立て処分に。
・ 毎年製造される衣類全体の85%が埋め立て処分に。
衣類を洗濯することで毎年50万トン(ペットボトル500億本分)のマイクロファイバーが海に流入
・ ポリエステルは着てるだけで洗濯するよりも3倍のマイクロプラスチックを大気中にばらまいている(人間が歩くマイクロプラスチックばらまきマシーン化)。
・ 人間活動による二酸化炭素排出量の10%をファッション産業が占める。で、業界がこのまま対策を怠ると、2050年までにその割合は26%まで増加する見込み(この部分は『クローゼットの中の怪物』で取りあげられていました)。
産業としては世界で2番目に大量の水を消費コットンのTシャツ1枚作るのに2700リットルの水を消費

あと、プラスチックについてもエピソード(気候ポッド 第22回 ~ プラスチックの責任は誰にあると思ってる? )があってですね。そこのプラスチックに関するファクトをここに貼るとクソ長くなるので、ぜひ聴いてみてください。

環境と気候変動への取り組みで他をぶっちぎっている感のあるパタゴニアでもここまでしかできないんですよね。一企業や個人が行動を変えるくらいでは、このシステムに張り巡らされている搾取のアリ地獄から抜け出すことはできません。

動画は最後まで、エンドロールの最後までしっかり観てください。大切なことがそこに凝縮されています。

25分過ぎに黒人女性の環境正義ジャーナリスト、ケンドラ・ピエール=ルイスの

「何ができるかをみつけて、自分の気が狂わない程度で影響を減らして、それから自分のライフスタイルを完璧にするための自分のエネルギーを、社会で集団的な方法に費やし、運動に参加することです」

というコメントは、環境正義/気候正義のために個人ができることとしてよく語られています。

パタゴニアを買えない、社会経済的に恵まれていないMAPA(最も影響を受ける人々と地域)の人たちにもできることじゃないと意味がありません。環境問題を、特にこのような環境正義問題は、恵まれている人だけが参加できる運動にしてはいけないんです。

ポッドキャスターふたりに刺さったのは、エンドロールの最後のほうでデザイナーが笑いながら話したこれ。

古着を買おう。まだ使える服を買うんだ。必要がないのに買わないで。だってそんなに要らないでしょ

ファッションの話だけじゃないですよね。気候変動だけの問題でもないと思います。「ほしいモノ」をたくさん買って消費するんじゃなくて、「必要なモノ」だけ買って、寿命がくるまで大切に扱う。

モノを使い捨てる社会は、人間も平気で使い捨てにします。
そんな社会を、そろそろ終わりにしませんか?

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