土壌が吸収できる二酸化炭素がこれまでの予測よりも少ないという研究結果


  化石燃料などから排出される二酸化炭素は大気中に留まるだけでなく、海中や土壌にも吸収され、長い年月を経てまた大気中に放出されます。

  土壌はこれまで二酸化炭素を放出する量よりも吸収する量の方が多く、気候変動による気温上昇を防ぐ役割を果たし、今後もその重要な役割を担うと考えられてきましたが、これまでの研究結果よりも土壌には二酸化炭素を吸収できる余裕がないため、今世紀末に向かって気候変動を抑えるための機能を果たさなくなる可能性があるという研究結果(He et al. 2016)が科学誌「サイエンス」に掲載されました。

  従来のコンピュータモデル(地球システムモデル)は、ラボでの実験で得た結果を元に土壌が吸収できる二酸化炭素の量や土壌中に滞留する期間をシミュレートしていました。

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土壌サンプルを採取した場所と深さ。Source: He et al. 2016

  今回の研究において、カリフォルニア大学アーバイン校の研究チームが世界各地の157ヶ所で採取した土壌サンプルに含まれる放射性炭素の年代を算出したところ、これまでのコンピュータモデルによるシミュレーションよりも平均で6倍以上の期間にわたって二酸化炭素は土壌中に滞在しており、土壌が吸収できる二酸化炭素量を40%以上多く見積もっていたことがわかりました。

  この結果により、土壌が吸収できる二酸化炭素量はかなり少なく、今世紀末までにこれまで考えられていた約半分の量の二酸化炭素しか吸収できない恐れがあると研究チームは指摘しています。

  数百年、数千年の単位で見れば、土壌には二酸化炭素を吸収する能力がありますが、21世紀末までの短期間で考えた場合に、気候変動の進行を抑えるために十分な速さで二酸化炭素のサイクルが進むかどうかが懸念されます。

  また、今回の研究以外でも、植物が吸収できる二酸化炭素量が従来の予測よりも少ないうえに、気温が上昇することによって寿命を迎えた植物の腐食・分解速度が増すため、大気中に放出される二酸化炭素量が増加し、さらなる気温上昇につながる可能性があるという研究結果(Wieder et al. 2015)も発表されています。

  現時点でも、大気中の二酸化炭素を取り出してどこかに貯蔵するネガティブエミッションの技術なしでは2100年までの気温上昇を1.5℃未満や2℃未満に抑えるのは不可能と考えられているのに、もしも土壌の二酸化炭素吸収能力が従来よりも小さいことによって大気中の二酸化炭素濃度の上昇が加速した場合、さらに多くの二酸化炭素を大気から取り出す必要が生じることになります。

  このブログで何度も指摘していますが、今のところネガティブエミッションの実用的な技術は開発されていません。

  しかし、今後このような研究が進めば、より正確なデータを元に気候モデルによるシミュレーションが行われるようになることは期待できます。

  気候変動対策の政策決定には、できる限り正確なデータが必要ですし、過小評価を元に未来が左右される政策を決めるのは避けなければなりません。

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【参照文献】
He, Y., Trumbore, S. E., Torn, M. S., Harden, J. W., Vaughn, L. J. S., Allison, S. D., & Randerson, J. T. (2016). Radiocarbon constraints imply reduced carbon uptake by soils during the 21st century. Science, 353(6306), 1419–1424. http://doi.org/10.1126/science.aad4273
Wieder, W. R., Cleveland, C. C., Smith, W. K., & Todd-brown, K. (2015). Future productivity and carbon storage limited by terrestrial nutrient availability, (April), 1–5. http://doi.org/10.1038/NGEO2413

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