COP21について知っておくべきこと

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  フランスのパリで開催される「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」を翌日に控え、世界各地ではデモが行われています。
  パリでは、連続テロ攻撃の影響で気候変動デモが禁止されましたが、それでも集まった人たちと警察隊が衝突し、200人以上の逮捕者が出ました。

  さて、これまでに20回開催されてきた気候変動枠組条約締約国会議ですが、「2100年までの気温上昇を2℃以下に抑える」という目標を達成するために、実効性のある国際的な枠組を決める最後のチャンスと言われており、参加各国もそのような共通認識を持ってパリ会議に臨もうとしています。

  気候変動パリ会議のウェブサイトにはこう書かれています。

COP21, also known as the 2015 Paris Climate Conference, will, for the first time in over 20 years of UN negotiations, aim to achieve a legally binding and universal agreement on climate, with the aim of keeping global warming below 2°C.
COP21(2015年気候変動パリ会議)は、地球温暖化による気温上昇を2℃以下に抑えるために、20年以上にわたる国連での交渉の中で初めて、気候変動に関する法的拘束力のある世界共通の合意達成を目標としています。

  では、この目標は今回のパリ会議で達成されそうなのでしょうか?

  残念ながら、今回の会議では「法的拘束力のある合意」に達することはできないでしょう。その足かせになっているのは、アメリカの政治です。気候変動問題への取り組みを自らのレガシーとして残そうとしているオバマ大統領は、今回のパリ会議で大きな成果を残したいと願っていますが、上院・下院共に共和党が多数を占める議会の承認が必要な「条約」という形での合意を果たすのは不可能です。あくまでも議会を通さなくてもすむ形での国際的合意にとどめなければならず、すでにアメリカとカナダ間、アメリカとフランス間では「法的拘束力のある合意(条約)は避ける」ということで合意しています。

  だからといって、パリ会議での合意事項が無意味になるわけではありません。あくまでも、ここが未来に向かうスタート地点になる、ということです。

  次に、パリ会議で議論される主なトピックですが、まずは「二酸化炭素排出量の削減目標」についてです。約190ヶ国が参加すると言われていますが、そのうちの約160ヶ国はすでに「Intended Nationally Determined Contributions (INDCs)/各国が自主的に決定する約束草案」と呼ばれる気候変動対策の目標を提出しています。残念なことに、各国が草案の目標を達成しても、気温上昇を2℃以内に抑えることは不可能で、現状は3℃近く気温が上昇するという結果が出ています。
  しかし、COP21では、参加各国が草案をより野心的なものに変更する見込みはなく、恐らく何年かに一度の報告や見直しを各国に義務づけることになると思われます。

  これまで、気候変動枠組条約締約国会議では、交渉で必ず先進国と途上国が衝突してきました。自分たちと同じ温室効果ガス排出量削減の責任を途上国にも背負わせようとする先進諸国と、産業化による経済発展のために今後数十年に渡って、責任を負わずに温室効果ガスを大量に排出しようとする途上国(中国やインド、ブラジルなど)の綱引きが交渉を遅らせてきたのです。

  今回の会議で最も交渉が難航するだろうと言われているのは、先進諸国の途上国に対する援助です。2009年に開催されたCOP15で、2020年までに先進国が毎年100億ドル(約1兆2千億円)を拠出し、途上国の温暖化への迅速な適応を援助する目的で「緑の気候基金」が設立されたのですが、目標額には達しておらず、また、途上国側は毎年100億ドルでは足りないと主張していることから、この問題で両者が合意に達することは容易ではないと考えられています。

  ですが、「何らかの合意に達する」という点では、悲観的に捉える意見は少ないです。
  COP21での国際的合意に向けて参加各国が個別に進めてきた下交渉や、中国とアメリカ間での温室効果ガス削減についての合意など、ここまでの流れを見る限り、COP15のように失望する結果になることはないと思います。でも、逆に希望に溢れた国際合意に至ることもないだろうと思います。

  パリが本当の意味でのスタートラインになることを期待しましょう。

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