Credit: Matthew Rutledge
米連邦最高裁から、石炭火力発電所からの二酸化炭素排出量を削減する「クリーン・パワー・プラン」の一時差し止めの判断を受けたオバマ政権ですが、2月9日に米議会に提出した「予算教書」で、新たな気候変動対策として同月4日に発表していた、石油会社に国産、輸入の別を問わず1バレルあたり10ドルの石油税を課し、それを道路建設や鉄道整備などのクリーンなインフラへの投資に充てる計画(21st Century Clean Transportation System)を提案しました。
交通部門による二酸化炭素排出量は、全体の約30%を占めており、石油税を投資することによって新たなインフラの構築やテクノロジーの開発を促し、二酸化炭素排出量の削減を目指します。石油税が実現すれば、1年あたり320億ドル(約3兆7400億円)の歳入に繋がり、その一部は過去25年間にわたってガソリン税が引き上げられていないために原資が不足している道路信託基金にも割り当てられます。
米上下院で過半数を占める共和党指導部と石油産業はすでに反発を強めており、実際に石油税が実現するかどうかは不透明です(というか共和党がアレなのできっと無理)。
しかし、以前より炭素税の導入を提案し続けてきた経済学者や環境保護団体などは、今回のオバマ政権の提案を歓迎する姿勢を見せています。
米環境保護庁は、二酸化炭素の社会的コストを1トンあたり37ドルとしていますが、経済の専門家からは低すぎると批判を受けてきました。米スタンフォード大学の研究は、人間活動による二酸化炭素排出による様々な社会的影響を考慮に入れると、実際の社会的コストは、二酸化炭素1トンあたり220ドルになると指摘しています。
米環境保護庁の値に近い40ドルで計算した場合、石油1バレルあたり約0.43トンの二酸化炭素が排出されるため、社会的コストは約17ドルです。オバマ政権が提案した1バレルあたり10ドルの石油税は、この社会的コストを反映しきれていないことになりますが、10ドルでもこれだけの反発を受けるので、最初の一歩としては悪くないかもしれません。
でも、環境を破壊し、人々の健康を損ない、命を奪いながら、石油を採掘・輸入して消費者に販売することで利益を得ている企業が税金を納めるのは、倫理・公正の観点から当然のことだと思います。
また、原油価格が1バレル30ドルを切っている今が、絶好のタイミングです。そして、石油だけにとどまらず、将来的に天然ガスと石炭に税を拡大することで、より迅速な二酸化炭素排出量の削減に繋げていかなければなりません。
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