気候変動対策をすればアメリカは29万5千人の早期死亡を防ぎ、132兆円の経済的利益に繋がるという研究結果

Wind turbines in Montana.jpg
          Credit: FreeImages.com/Steve Ralston

  2015年に国際的合意に至った「パリ協定」で定めた目標を達成するために野心的な気候変動対策を実施すれば、アメリカは29万5千人の早期死亡の予防と、最大で1兆2千億ドル(約132兆円)の経済的利益に繋がるという研究結果が、科学誌「ネイチャー・クライメートチェンジ」に掲載されました。

  米デューク大学が行った研究では、2030年までに2005年比で温室効果ガス排出量を40%削減するという、「パリ協定」におけるアメリカの目標を達成するための気候変動対策と整合性を持たせ、エネルギー部門における温室効果ガス排出量を63%、交通部門における温室効果ガス排出量を75%削減するというシナリオでシミュレーションを行ったところ、2030年までにクリーンエネルギー政策によって17万5千人、クリーン交通政策では12万人の合計29万5千人が、肺がんや心臓発作、呼吸器疾患などによる早死にを避けることができるという結果が出ました。

  2030年以降も、クリーンエネルギー政策によって年間2万2千人、クリーン交通政策によって1万4千人の早期死亡を防ぐことができ、こうした野心的な政策を実行することによる経済的利益が費用の最大10倍に達するとしています。その利益は、クリーンエネルギー政策で最大8,000億ドル(約88兆円)、クリーン交通政策では最大4,000億ドル(44兆円)の合計1兆2千億ドル(132兆円)になると推定されています。

    上述した気候変動対策の実行による早期死亡の予防と経済的利益以外にも、年間に1,500万時間の大気汚染が原因の疾患による欠勤や早退を減らし、喘息発作で緊急治療室を利用する子どもを年間に2万9千人減らすことができ、これらの効果も合わせて、対策実施後の経済的利益は年間約2,500億ドル(約2兆8千億円)になると推定しています。

  研究の筆頭執筆者であるドリュー・シンデル氏は、「人々はジカ熱やSARS(重症急性呼吸器症候群)の心配をするが、アメリカで年間に20万人が大気汚染によって亡くなっていることを知らないのです。」と述べ、気候変動対策の経済効果と人的損失の防止を積極的に伝える必要があると主張しています。


【参照】
Shindell, D., Lee, Y. & Faluvegi, G. Climate and health impacts of US emissions reductions consistent with 2 °C. Nat Clim Change (2016). doi:10.1038/nclimate2935

【あわせて読んでほしい記事】

にほんブログ村 環境ブログ 地球環境へ

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック